優しき挑戦者(阪大・ゲスト篇)

第3次大阪府障害計画策定にむけて意見具申―人が人間(ひと)として普通に暮らせる支援社会づくり―
大阪府障害者施策推進協議会(2002年6月7日)

第5章.重点施策の展開方策

1.施設サービス

(1)通所施設の地域支援の拠点化

 通所型を基本とし、周辺に配備されたグループホームや単身生活等への支援を目的としたナイトケアも含めた部門、及び本人や家族への介護支援としてヘルパー派遣、ショートステイなどの機能を有する通所施設を地域の中に適切に配備することが必要である。特に、通所者以外の地域内障害者に対する在宅福祉サービスの提供体制が強化される必要がある。

(2)入所施設機能の分化

 従来入所施設が果たしてきた寝食と活動の場の一体的提供の形を改め、居住部門は地域での暮らしの場の一形態と位置づけ、福祉ホームやグループホームなどの制度を活用し、提供が可能となったホームヘルパー派遣などによって介護の確保をするなどの形態をとる。

 ヘルパー派遣などの事業を促進するためには、障害者のニーズに対応できる供給体制の多元化を図る必要があり、この観点からも今後は、特に取り組みが遅れている障害者施設運営法人等に対してこれらの事業実施について、支援費制度における事業者指定の場の活用も含めて積極的に推し進めていくことが重要である。

(3)小規模通所授産も地域支援機能を付加

 今後増加が見込まれる小規模通所授産施設について、それが単に無認可障害者福祉作業所の認可移行の意味付けだけに留めず、可能な限り地域に開かれた障害者に一番近い社会資源として、地域生活支援機能が果たせるよう、生活支援センターやヘルパー派遣、グループホームの運営などの事業展開をめざして、府は無認可障害者福祉作業所支援方策も含め、そのあり方を検討する必要がある。

(4)地域移行のためのグループホーム

 グループホームは施設からの地域生活移行へ向けて大きな役割を担ってきた。平成元(1989)年に国制度化された知的障害者グループホームは、施設ではなく障害のある人が集って暮らす家としてその設置が促進されてきた。(なお、精神障害者グループホームは、平成5(1993)年度に制度化された。)

 より普通の暮らしに近いそこでの生活は、障害のある人自身からも受け入れられるにつれて、近年は重度の障害のある人の入居も増大しつつある。重度障害者への対応や入居期間の長期化などの結果、ホーム利用者の精神的安定を図る必要も増大し、また居住環境の向上が求められており、個室化への要望も年々高まっているが、都市部での4人以上の物件確保には困難が伴っている。

 一方、グループホームは、障害者の地域生活や今後の入所施設からの地域移行促進方策の主要な手段として障害者福祉施策の中心的社会資源としてますますその重要性が認識されてきている。このため、暮らしの場として利用者を管理することを極力排除してきた原則を尊重しながら、その存在に公益性を付与し、公営住宅の活用など、良質な物件確保の効果的方策について検討する必要がある。

 また、グループホームでの地域移行に際して、その日中の活動の場の確保がその成否を握っているため、その確保方策についても一体的に検討する必要がある。

 このグループホームについては、それが障害者の唯一の暮らしの場ではないことは言うまでも無い。一人で暮らす、夫婦で暮らす、家族と暮らす、さまざまな暮らしの一つの形態であるが、入所施設からの地域移行や成人して後の親からの独立のステップとして有効であり、またその支えあいながら暮らす安心感が永続的な生活となる場合もある。単身や結婚しての家族生活への通過点としてのグループホーム利用も重要な意味をもっている。

 グループホームは、従来の入所施設での措置の延長にあるグループホームから、地域の障害者の暮らしの場の一形態として在宅の障害者も含めた展開が進みつつあり、今後日中活動の場の整備とあわせ、ますます市町村の主体的な取り組みが求められる。

(5)入所施設からの地域移行の促進

 障害者の地域生活移行という課題の重要性から、新たな計画の指標の一つとして入所施設からの地域生活移行の設定も検討すべき課題である。また支援費支給の更新の際には、個別プログラムの策定を通じた地域への移行方策を検討するなど、利用者の自己決定を最大限尊重しながら利用の意味を検証していく機会の設定が重要である。

 こうした取り組みを入所施設職員の努力のみにその責を求めることは避けなければならないが、まずは施設職員の人権意識の醸成が必要であり、つぎに地域内での職員間の情報交換と交流の場を設定するなど、できる部分からの具体的取組を積み上げることによって施設職員の視野を広げ、地域の資源開拓に結びつくことが考えられる。今後こうしたネットワークづくりが求められる。

 措置という規制の強い形態から、自由な運営の期待できる支援費制度に転換したとき、従前より柔軟な発想で地域移行や地域支援の形が望まれる。柔軟な発想による先のネットワークづくりをはじめピアカウンセリングやケアマネジメントを活用した地域生活移行促進マニュアルを作成するなども重要である。

(6)身体障害者の地域移行

 身体障害者の地域生活移行については、障害に配慮された住まいと介護の確保が不可欠であり、バリア・フリーに配慮された住宅へのヘルパー派遣などの活用により、施設外での暮らしを望む障害者の願いに応える方策を検討すべきである。その際、地域で家族と暮らす重度障害者の「独立したい」という自立生活の願いを実現するためにも、それヘ向けたトレーニングの場が必要である。この場として福祉ホームやグループホームの活用と合わせ、地域に整備が図られつつあるデイサービス施設やB型障害者福祉センターの夜間利用など既存資源の有効活用の視点も併せて検討する必要がある。また、今後の入所型施設からの地域移行促進の方向を踏まえ、入所型知的障害者援護施設における自活訓練事業の施設外借家利用が可能となったことも念頭におきながら、身体障害者入所型施設に居住する障害者の地域生活移行促進についても、在宅身体障害者のこのような仕組みを共同利用するなどの検討が必要である。

 次に身体障害者の住宅の形態については、従前の身体障害者のグループホーム、福祉ホーム、ケア付き住宅、自立支援事業など様々な名称でさまざまなイメージが飛び交い、それが議論を混乱させてきたきらいがある。今後は、「重度身体障害者の居住の場への支援」に一本化し、介護体制の効果的なあり方について議論すべきである。その際、単身障害者の住宅へのホームヘルパーの日中派遣から、重度身体障害者の小集団住宅での夜間常駐形態まで一連の支援の度合いの濃淡と、その集団規模などが指標になる。

(7)精神障害者の地域移行

 精神障害者の地域生活移行は、第一に、病状的には退院できるにもかかわらず地域に受け皿がないなどの理由で、精神病院で生活している、いわゆる「社会的入院者」の解消である。生活の場の整備が不十分なことに加え、長期の入院で本人の意欲が低下していたり、退院に向けての十分な情報提供や働きかけがされていないなど、様々な理由で入院が長期化している精神障害者の生活の場を、地域へ移行することが急務である。社会的入院者と地域を結ぶ支援を行う大阪府の「社会的入院解消研究事業」は、長期入院者の退院に成果を上げており、全国から注目されているところである。地域の生活の場、活動の場、ホームヘルプ供給体制等の整備に加え、今後とも、それらの資源と障害者を結び付けていくシステムづくりが必要である。

(8)利用契約制度下での情報開示と提供

 利用契約制度化にあたって、利用者である障害者が施設の生活情報が的確に把握できるためには施設生活の情報開示とその的確な提供体制の確保が重要である。市町村も市町村外の施設や事業者情報については、収集が困難な場合も予測され、府は、事業者指定の際の情報等を収集し、インターネットなどを活用し、府域を網羅する施設情報等の提供体制を整備する必要がある。

(9)生活の質の向上

 施設内における生活の質の向上を図るためには、第三者評価の基準とその評価の仕方、そしてそれの情報開示、事業者責任としての苦情解決などが必要である。

 府としては、国のシステムも視野に入れて、各施設の契約に際して交付する義務のある重要事項説明書などの簡易な内容や施設の自己PR情報などがインターネットなどを通じて市町村や利用者に手軽に閲覧できるよう、そのデータバンクの構築も質の向上への側面的な効果が期待できる。

 また、従来の硬直的な職員配置基準の規制緩和など事業者が柔軟な施設運営ができる条件整備も質の向上のためには必要であり、機会あるごとに国に要望する必要がある。

(10)更生相談所の新たな役割

 支援費支給の仕組みの中で、身体障害者更生相談所及び知的障害者更生相談所は市町村からの求めに応じて障害程度に対して意見を述べるなど専門的機能が期待されている。

 施設サービスに関連しては、施設支援費支給更新の際の個別プログラムに対する市町村からの依頼による助言・評価などの役割も担うべき課題ではないかと考える。

(11)地域支援の人材

 施設には、地域での暮らしを支援するボランティアやヘルパーなど多様な人材の確保と地域に存在する各種の資源との連携を図るコーディネーター的な役割を果たす人材の充実が必要である。特に、生活支援センター事業などにおいて実施されつつある、質の高い当事者同士での相談活動(ピアカウンセリング)や障害者が社会で自信をもって生活できるようにするため、自立生活プログラム(ILP)など体系化された(エンパワメント)プログラムの展開との連携などが重要である。

(12)既存入所施設の今後

 従来、入所施設の整備は府の役割との認識が市町村に存在してきたことから、その存在は、必ずしも地元の資源として十分認識されてきたとはいえず、ひいては地域移行におけるグループホームの設置についても地元との調整に困難が伴うことがあった。

 今後、既存入所施設は、一定枠を地元優先枠と設定し、徐々に地元市町村内の障害者利用の割合を増やし、また地域生活支援の拠点として再構築を図るなどして、徐々に地域に溶け込んだ存在へと転換を図る必要がある。そのため府は、圏域ごとの整備指針と転換方策を策定する必要がある。その際、障害保健福祉圏域単位での市町村障害者計画の考え方や市町村圏域調整会議などを通じた圏域内市町村の主体的意思を踏まえる必要がある。

(13)精神障害者社会復帰施設の整備

 社会復帰施設中、自立生活へのトレーニングの場としての生活訓練施設や福祉ホームの整備は、今後社会的入院解消を図り、病院から地域への移行を進める上で、グループホームの整備とあわせ、社会復帰に向けた生活訓練の場として重要である。しかし、この生活訓練施設については、原則2年間という有期限がその退寮を控えた精神障害者を不安にし、社会復帰を阻害する場合もある。その不安を解消するためにも、地域での生活支援の体制と継続的な医療の関与、それを支える精神障害者地域生活支援センターなどの機能を地域で根付かせることが、そのニーズに即した量的整備と合わせて重要である。

 また、社会復帰施設を整備するにあたっては、施設建設予定地周辺における住民の理解が得られず、差別や偏見により設置に対する反対運動が起こり、施設設置が進まないという現状がある。特に、整備が立ち遅れている精神障害者施設に関しては、精神障害に対する根強い偏見から施設コンフリクトが生じやすい。これに対しては、施設コンフリクトの問題が生じた時に対応するだけでなく、日ごろから地域住民に対する啓発活動などを行い、地域住民を巻き込んで障害者理解の取組みを進めておく必要がある。それとともに、府民のライフステージにおけるあらゆる機会を捉えて、障害者理解を進める必要がある。

(14)広域的セーフティーネットと残された措置の重要性

 親の突然の死亡などの危機管理施策として、あるいは行動障害などが強く通常の地域支援体制では支援が困難な重度・重複障害者の生活の場として従来型の入所施設が、広域的なセーフティー・ネットの役割を担う必要が今後もあろう。

 しかし、その場合であっても元の地域で暮らす希望のある障害者にはその暮らしが実現できるよう個別支援プログラムなどを通じてその具体的方策が地元市町村と調整の上で用意されている必要がある。こうした地域で暮らす場として、今後は、障害保健福祉圏域単位で重度・重複者の小規模で、かつケアの効率の高い介護施設の検討が必要である。

 また、このような緊急の際には、市町村による措置が活用されるよう、支援費制度下においても柔軟かつ迅速な対応が必要である。

(15)重複障害者への支援研究

 強度行動障害のある障害者が、増えている。その障害者に対する支援の困難性から、息の長い取り組みにも疲れ、燃え尽きてしまう職員の存在もあるようである。 一施設単位での孤独な職員の取り組みでは限界もあるであろう。今後の府立施設は、こうした各地の職員に対して、その支援のあり方研究の場として大きく開放し、共に研究し、共に学び、共に励ましあう場としての役割を位置づけることを、先に述べた広域的な府内障害者のセーフティー・ネットとしての役割と共に検討してはと考える。

 (16)高齢化への対応

 知的障害者の高齢化を念頭に置いた施設内の暮らしのあり方は、指導から介護へ、作業からゆとりへと変化する。精神病院においても、精神障害者の高齢化が進んでいる。こうした高齢化に対応した暮らしの場のあり方については、就労による収入の低下などの要因も踏まえながら、高齢者施策との相互利用や医療機関との連携、介護保険施設サービス利用のあり方など、利用契約のもとでの柔軟な運営を視野に入れて検討する必要がある。

 また、事故などによる頚椎損傷者など重度の身体障害者が高齢化し、居宅での介護・看護ができなくなったときの療養施設の必要性について、医療と暮らしの場双方の確保の観点から今後の課題として留意しておく必要もある。

2.地域生活の支援 (介護・グループホームなど)

(1)ホームヘルプ・ガイドヘルプ

 ホームヘルプやガイドヘルプの今後を検討する際、過去の実態を踏まえることは重要なことである。このサービスについては、そのニーズを対象別にもう少し丁寧に見る必要があるのではないかと考える。以下、平成9(1997)年から10(1998)年にかけて実施された在宅障害者の調査をもとに述べる。

【実態とそれへの意見】

  • 身体障害者のホームヘルプ利用希望率は16%、ガイドヘルプ利用希望率は15%であり、これをもとに算出した現計画の予測必要量に対する利用実績は、76%である。
  • 知的障害者のホームヘルプ利用希望率は22%、ガイドヘルプ利用希望率は24%であり、これをもとに算出した現計画の予測必要量に対する利用実績は、21%である。加えて、その実績の内訳をみると、ホームヘルプとガイドヘルプの比率が1対9と、その利用のほとんどがガイドヘルプである。
  • 障害児の親の回答であるが、身体障害児ホームヘルプ利用希望率は19%、知的障害児ホームヘルプ利用希望率は22%である。これをもとに算出した現計画の予測必要量に対する利用実績は、それぞれ2.5%、1.4%である。
  • 難病患者のホームヘルプ利用希望率は、12%であり、それを基に算出した予測必要量に対する実績は、4.3%である。

 この結果から身体障害者を除いては、その予測必要量に対する利用実績について、大きな乖離が見て取れる。その原因については、次のような市町村職員のヒヤリング時の意見があった。

  1. 身体障害者ホームヘルプについては、利用者の訴えが、初期相談段階でわかりやすいのだが、知的障害者については具体的に「○○ができないので」という形での訴えがあまりないのでわかり難いことから、その必要性を相談段階から見逃してしまうことがある。また、ホームヘルプ単独での利用は、あまり意味がないことが多く、就労や日中活動などとセットで考える必要がある。ホームヘルプのみでは、生活支援につながらないのは、昼間、知的障害者に対してヘルパーが居宅内で何を援助するのか、何を必要としているのかを考えるとわかるであろう。地域療育等支援事業をはじめとする各種の支援事業とセットで考える必要があるということである。
  2. 障害児ホームヘルプについては、子は親が育てるものという意識が双方にあり、積極的に相談者側が「何かできる方法はないか」と前に出ないとサービスにはつながらない。しかし、一人親家庭や障害者が親の場合など、子供を託そうとすることへの親の負い目を和らげながら、逼迫した生活実態に積極的に提供しようという思想を相談の受け手側が持つ必要がある。また居宅内介護の内容を組み立てるとき、どうしても通学や通園へのガイドヘルプなどを含めなければ対応できないことが多い。一人親家庭などに対しては、もっと積極的に対応する必要がある。

 また、委員からの「現在の計画派遣時間で足りているのか。」との質問に対しては、市町村職員からは「知的障害者のヘルプニーズは潜在的にはかなりあるし、身体障害者のヘルプニーズは、現計画の目標量よりもっとあると考えられる」との考えが示された。

 以上の実態や意見を踏まえて、今後の方向について述べる。

  • 「過不足の無い」サービス提供を目指すためには、圏域内あるいは市町村単位での必要な介護の総量検証が重要である。その際、障害の種別ごとの先の生活実態から派生するニーズの違いを踏まえた吟味が大切である。
  • また定期的な派遣形態のみならず、障害児ホームヘルパーや難病ホームヘルパーなどに見られるように、間歇的な利用ニーズに対応できる契約形態も考慮される必要がある。精神障害者にも同様のニーズがあるといわれている。
  • そのためには、柔軟な派遣に対応できる体制作りが必要であり、今後は地域でのNPO活動などの活性化が重要な要素となると考えられる。
  • 社会福祉基礎構造改革においては、多様な供給主体の参入が、競争力を高め、質の向上が図れるとの設計であった。現在の供給主体は、市町村直営が4割、社協4割、民間社会福祉法人2割となっている。支援費制度においては、NPO法人・小規模通所授産施設の運営法人、さらには株式会社等まで供給主体の拡充が予定されている。こうした点を踏まえ、既存社会福祉法人、わけても地域に密着した通所施設の運営法人や当事者活動を中心としたNPOの活動促進を如何に図るかが重要な視点である。障害者ヘルパーの養成や事業者説明会の実施などを通じて、参入促進を図る必要がある。さらに、支援費支給制度において、市町村の判断による特例居宅生活支援費の事業者としての指定にも供給主体拡大の可能性が秘められていると考える。
  • 障害種別々の特性を理解し、配慮できる人材を確保するためには、障害種別ごとの研修の強化とあわせて、地域の障害関係施設やNPOなどが派遣の供給主体となったり、聴覚障害者や精神障害者同士のピアヘルパーなど多様な供給主体の整備が必要である。各地に展開されつつある生活支援センターが供給の基地となることも有効である。
  • しかし、このNPOや小規模通所授産施設などの運営についても、経営の視点を強化しなければ、支援費制度におけるその事業継続について楽観的な見通しは期待できない。政府の総合規制改革会議の「規制改革の推進に関する第1次答申」(平成13(2001)年12月)では、「生活者向けサービス分野」は、「非営利的なサービスとの過去の性格付け」からくるコストの合理化や生産性の向上があまり進まず、サービスの質的向上・量的拡大への妨げの指摘もあった。
  • この答申では、障害者福祉制度の改革として40歳以上65歳未満の障害者が介護保険の被保険者とされているにもかかわらず、加齢に伴う疾病以外は介護保険の給付ではなく、支援費制度となっている点を指摘し、両制度の関係についての抜本的な検討が必要とされており、政府も直ちに検討を開始し、結論を得るとしている。大阪における40歳から64歳までの介護保険法施行令での特定疾病による介護保険給付対象者は、18歳以上65歳未満の要援護身体障害者の26%を占めていることから、計画策定に当たってはその実態にも留意を払う必要がある。(新ふれあいおおさか高齢者計画によると、40〜64歳での介護保険給付対象者数、大阪市除くは、平成14(2002)年には6817人。一方、大阪府市町村障害者計画策定マニュアルにて、18〜64歳での在宅要援護身体障害者数は、大阪市を除いて平成14(2002)年では、26100人である。)
  • 精神障害者ホームヘルプ事業については、支援費制度の対象とはならず、平成14(2002)年度から市町村での事業実施が始まるという現状から、今後に残された課題も多い。精神障害者に対するホームヘルプは、環境の変化になじむのに時間がかかる精神障害の特性に着目して、利用者とヘルパーとの関係性を大切にし、徐々に利用者の生活を豊かにしていくといった、他の障害とは少し異なる援助内容の重要性が指摘されている。また、市町村での体制整備に当たってはヘルパーなどの申請が気軽に身近で出来るよう、窓口と保健所との連携や地域生活支援センターなどの相談体制が重要である。この保健所や保健センターなどと派遣窓口である市町村との連携については、難病患者のホームヘルプ派遣についても重要であり、保健婦などの在宅福祉サービスに関する研修などの充実が必要である。

(2)ショートステイ

 今後、知的障害者の入所施設の建設に対する抑制方向が、国によって打ち出されつつある現在、従来のショートステイの拡充方策であった入所施設付帯による専用床整備についても、再検討が迫られている。

 本来この事業は、日常の生活圏である市町村内にそのニーズに見合うショートステイ枠を整備すべきものであり、大阪府でも従来からそうした方向を模索してきたのは事実である。都市部の土地取得が困難な事情を反映して、入所施設は周辺部、わけても府内南部に偏在する傾向にあることは、指摘されてきたところである。そこで、比較的各市町村内に広く整備展開されている通所施設などにおいて、この事業展開が図れないか模索を続けてきた。

 平成8(1996)年度から10(1998)年度にかけて府は「知的障害者地域生活総合支援モデル事業」を実施し、その事業の主要項目の一つとして通所施設を母体としたショートステイの実施を位置づけていた。その事業報告で箕面市は、市の財政負担が当然伴っていることを前提に、通所施設のショートステイについて「通所施設を実施施設とする場合、トワイライトショート(家族の帰宅が夜間になる場合など)や土・日・祝日の昼間のみのショートステイ等を検討していけば、実施施設にとっても、利用者にとってもメリットがあるのではないか。ただし、ショートステイとするのか、デイサービスとするのか、余暇活動支援とするのか、事業それぞれの役割分担を明確にすることが必要である。」との報告があった。

 また、「ショートステイ施設の柔軟な運営がヘルパーやデイサービス等、他の制度の不十分さをカバーしている傾向があることは否めない。」との報告もあった。

 その後、平成13(2001)年度から国も本制度の日帰り利用をその利用形態として認知したことから、本事業の性質も緊急時の一時預けというイメージから、その機能の幅を広げてきたのではないか。

 本事業については、その利用実態に季節的変動が大きいことが指摘されているが、その原因は学校の春休みや夏休み期間中の学童保育的なデイサービス利用にある。これが、予約制をとっているため、緊急時の利用を妨げているという実態があった。

 今後は、学校教育の長期休暇期間中のあり方も含めて、地域の中で各種のサービスの柔軟な組み合わせを前提に、通所施設などでのこの事業の展開をデザインする必要がある。

 次に、重症心身障害児(者)など重度障害者の利用が、受け入れ困難との理由から難しいとの指摘がある。この点については、単に多くの介護量を必要とするだけでなく、個別の身体状況の把握が安全上からも必要な場合が多いと考えられるので、普段から日中の活動を通じて一人ひとりを熟知した上でのショートステイの整備が必要であり、その点からも身近な地域で顔の見える場所での本事業の実施が重要である。

 この点で、一部の市で実施されているデイサービス施設での取り組みも貴重な実践である。

 次に、精神障害者ショートステイ事業については、現在は、7箇所の生活訓練施設に併設する形で18床が整備されているが、地域的にも偏在しており、利用状況も一部の精神障害者の利用にとどまっており、事業が緒についたばかりの状態である。平成13年(2001)上半期の利用状況は、延べ154人が784日(一人平均利用日数5.1日)利用している。2箇所は、体験入所としての利用も行っている。

 平成14(2002)年度からは、「精神障害者居宅生活支援事業」に「精神障害者短期入所事業」として位置付けられ、対象施設も身体障害者ショートステイ施設・知的障害者ショートステイ施設との相互利用などにも拡大される。

 ショートステイは、家族が障害者を介護できない際の本人への支援と、家族の介護負担を軽減し、本人との日常関係を良好に保つといった両面の意味があるが、精神障害は「揺れる障害」とも言われ、些細な不安が危機に拡大しない段階でサポートすることが再発防止に大切で、この段階でのサポート策として、諸外国では、「クライシスセンター」等と呼ばれる短期間休養のために利用できる施設があり、有効性が確認されている。

 特に、地域生活支援センターや福祉機関の窓口が閉まる土曜・日曜や盆、年末年始等、通える場がなくなる時、精神障害者は、時として不安に襲われることも多く、短期入所はそのような時重要な意味を持っているとの意見もある。

 また、精神障害者本人にとって、自らの症状などをよく理解し、また自らも慣れている主治医のいる病院での入院という形態で、ショートステイが必要な精神障害者のケアを、精神病院が担ってきた面がある。

 しかし、精神病院での入院という形態に抵抗感のある場合もあり、今後は、地域生活支援の一環としての本事業の効用などをさらに精査し、量の確保とともに、生活支援センターの機能拡大や単身生活者の利用等対象者の見直しなどを含めて、体験入所機能やクライシスセンター機能を施策としてどう位置付けるのか、そのあり方を十分検討する必要がある。

(3)難病患者への地域支援

 難病患者などの在宅療養生活を支援するため、平成9(1997)年1月よりホームヘルプサービス事業、ショートステイ事業、日常生活用具給付事業等を内容とする難病患者等居宅生活支援事業が実施されている。本事業は、介護が必要な状態にある特定疾患(特定疾患調査研究事業の対象疾患)患者及び慢性関節リウマチ患者であって、介護保険法、老人福祉法、身体障害者福祉法などの施策の対象とならない患者で、かつ在宅で療養している者が対象である。この事業実績は低位に留まっている。これは、本制度がこの対象規定が表すように、元来身体障害者施策を始めとする他の施策の対象とならない難病患者などへの支援を目的としたものであるため、身体機能障害が重い難病患者は身体障害者手帳の取得により身体障害者施策の中での対応に移行していることが考えられる。

 しかし、本制度はその発足時から「QOL(生活の質)の向上を目指した福祉施策の推進」を目的としており、症状に波があるなどの患者が在宅療養生活を送る際、その療養生活の質を高めるという事業趣旨を関係者が十分理解しておらず、そのため相談に当たる関係者が患者の身体機能のみならず生活全体を見渡した中で「ホームヘルプが必要だ」と感じ取ることのできる洞察力がいま一つ不十分な点が問題点である。従って、この制度の本来の趣旨を関係者がよく理解することがまずもっての課題である。

 つぎに、難病患者への相談窓口が府の保健所との認識が市町村段階では強く、市町村において提供される先の生活支援事業がうまく活用されない、ひいては制度周知の面でも溝が生じやすいという指摘がある。今後は、各事業の関係者へのこうした事業の趣旨周知とあわせて、市町村の福祉行政と保健行政、さらに府の保健所といった関係機関の連携をさらに強化する必要がある。また、難病患者の当事者団体も様々な形で相談活動などに取り組んでいるところからこうした当事者活動を活用するなど行政と団体活動の協働の視点や近隣でのささえあい活動の育成も今後は重要な点である。またホームヘルパーの養成研修にあたっては「生活の質の向上」を目的とした観点からのPRや内容の充実を図る必要がある。

(4)地域生活を推進するグループホームとその生活支援

 支援費制度の施行を控えた今、その制度設計の背景にはいくつかの今後の障害者福祉に対する考え方の転換方向が盛り込まれつつある。そのひとつが入所施設からの地域移行の強化である。

 一時、施設福祉より在宅福祉の方が財政的観点からは負担が軽くすむといった論調があったが、在宅福祉においてもさまざまなサービスを組み合わせれば、入所施設利用と変わらぬ社会的ランニング・コストが発生する場合がある。

 さらに、地域生活を推進する主要な施策の一つであるグループホームの利用者の実態から見れば、食費・光熱水費の他に家賃やホーム開設時の費用負担(入居時の一時金)等、現行の入所施設利用以上の個人負担もあり、障害基礎年金(2級月額7万円弱)だけでは対応しきれない実情から、本人のホーム利用の意志があっても実現できない現実があることにも留意する必要がある。

 既に知的障害者については、全国で3人に1人が入所施設を利用しており、今後とも入所施設を建設しつづけるという路線の延長線上に見えるある種の限界や「普通の市民と同じ暮らしを」といった観点から、「地域移行」を目指すとの方向はさらに推進されなければならない。また、この地域移行後の地域生活を支えるという目標には、本来社会的なコストがかかるという点をしっかりと理解しておく必要がある。もとより福祉分野においてもその事業運営における効率性は強めていく必要があるものの、基本的には地域で暮らせる基盤の整備がこれからの目指すべき路線であることをしっかりと見据えていく必要がある。

 次に、地域への移行の主要施策であるグループホームなどについて、1の施設サービスにて述べた記載を踏まえて、さらに詳述する。

@物件の確保

 グループホームの設置が進まない原因の第1は、住居の確保である。そのため、府は公営住宅の活用を積極的に推進してきた。その結果、全国的に見てもその活用実績は非常に高い水準となっており、今後の積極的活用推進を期待するとともにその努力は評価できるものと考える。一方この間の活用実践の中で運営主体の希望と提供可能な物件のミスマッチの問題や、2戸セット提供の多い中での時として二つの住居が隣接して活用できない場合もあり支援に当たる世話人などの負担が大きくなる問題、入居に対する住民の理解促進などの課題も浮き彫りになってきており、今後とも民間住宅の活用との両面からの総合的な対策が必要である。

 新計画策定に当たっては、グループホームの総量目標設定の上にたって、その内訳としての公営住宅の計画的提供について大阪府高齢者・障害者住宅計画において明確に目標を提示することが必要である。

 次に、民間住宅の活用については、安定的な家賃収入の保証などのメリットやバックアップ体制による生活支援の仕組みなどをPRするなどグループホームについての賃貸住宅経営者への理解促進を図ること、住宅改造に対するニーズへの対応、運営面では出身自治体の支援費支給によるグループホームへのホームヘルパー派遣などを組み合わせ、運営の安定を図るなどの対応を突っ込んで検討することによって促進される可能性があると考えられる。さらに、貸主の意向を踏まえた空き家の情報提供、学校の余裕教室の活用など可能な範囲から柔軟な施策への取り組みも求められる。

 また、4人以上という最低人数の3人への緩和などにより公営住宅においても1戸での運営がより容易になるとの意見もある。さらに今後の支援費の基準額の設定に当たっては、全国一律ではなく、都市部の状況を考慮し、民間住宅の活用促進につながるような措置を、国への要望とあわせて、検討する必要がある。

A日中活動の場の確保など

 運営主体による意見ヒヤリングでは、日中活動の場さえあればグループホームは開設できるとの意見もあった。逆には、中・軽度障害者の就労の場が閉ざされていること、重度障害者の昼間の活動の場が少ないこと、さらには日中活動の場の整備に際しての地元との調整が近年困難になってきていることなどが地域移行を阻む要因となっている。

 次に、無年金の軽度障害者の収入の道が閉ざされた場合には、厳格な生活保護受給の道しかないこと、重度者については、年間100万円程度の年金収入だけでは地域での生活を維持することが困難なこと、従来から想定されてきた障害に対する素人の世話人での対応の困難さなど、種々の課題がある。府の世話人養成研修の内容を検証するとともに、経済的側面に対しては国に要望することが必要である。

Bバックアップの重要性

 地域でのグループホームの展開は、それ単体で考えられる問題ではなく、その日中活動のあり方や地域での仲間作り、安定的な就労への支援体制など複合的な施策が必要とされる点を十分認識しておく必要がある。この点で、大きな役割を果たしてきたのが、府の「バックアップ機能強化事業」である。複雑な都市部での生活には、知的障害のある人にとって、さまざまに混乱する要因が潜んでいる。通勤途上の問題、職場内での問題、家族からの権利侵害や消費者被害、さらにはサラ金被害まで1人の障害者を取り巻くリスクは、数多い。これら、片手間ではできないバックアップ業務が円滑に機能する制度的条件として今後とも重要な施策である。事実、この制度が実施されて以降、府内のグループホームの設置は加速度的な伸びを見せ、その結果、現計画初期は一部先駆的施設の取り組みとしか見られなかったのが、今ではその取り組み自体は、普通の当たり前の取り組みとして定着している。この10年間で、金剛コロニーの定員分の知的障害者を巨大施設の形ではなく、地域の中で見えない姿で根付かせて来た意義は大きい。

C在宅障害者のトレーニング

 府の「在宅障害者自活訓練事業」は、地域の在宅障害者が親から離れて地域で暮らすため、グループホームへの移行トレーニングの場として制度化されたものであり、その事業の意図するところの意味は重要なものである。

 この制度化以前は、入所施設利用者の地域生活への取り組みとしてしか認識されていなかったグループホームであった。制度化以降、地域の在宅障害者が地域でのバックアップの下、「親が元気なうちに、親から離れて暮らす姿が見られる」道筋を示しえて、地域の暮らしの場作りに果たしている役割は、大変重要である。一方、本事業の親離れ訓練としての意味が前面に出るにつれ、体験的な宿泊訓練の様相が一部で出始めている。それが、密度の薄い「体験」の域をでないならば、グループホームへの橋渡しとしての本事業の趣旨から一抹の危惧が感じられる。

 この在宅障害者のトレーニング機能は、知的障害者のみに必要なことではなく、幼少時からの身体障害者にも一部必要とされる機能である。生活経験の乏しさ、コミュニケーションのとりづらさは、対人関係の場である種の萎縮を覚えさせ、ひいては自己決定をしにくくさせる結果となる。重度身体障害者の親亡き後の問題も看過できないものがあり、そのトレーニングを希望し、必要とするこうした身体障害者に対しても、その場の設定が地域の中で必要である。このような場は、必ずしも専用の場にこだわることなく、地域での生活支援センターで、あるいはB型身体障害者福祉センターやデイサービス・センターなど既存の資源の有効活用によって、ハード事業ではなく、ソフト事業としての検討が必要なのではないか。

 今後は、福祉ホームとホームヘルパー派遣を一体化した形など、共同生活イメージから一歩踏み出した、個別性の高い知的障害者や身体障害者の小規模な生活の場づくりも課題としての認識が必要であり、引き続き国への要望とあわせて、検討する必要がある。

 新しい環境になじむのが苦手な精神障害者にとっては、グループホームでの体験入所が、病院から地域生活への移行のプロセスとして有効であることが「社会的入院解消研究事業」の過程で認められている。また、親から離れて独立して暮らす場合にも、グループホームでの体験入所は、体験者が希望に向かって進む推進力になるものと思われる。

D利用契約制度化におけるグループホーム

 グループホームは、従来から措置ではなく契約による利用制度であったが、支援費制度の下、重要事項説明書の交付などより一層その側面が明確になってくる。知的障害者に対して、契約書や重要事項説明書など無意味であるとの意見も聞かれるが、トラブル等への対処が困難な場合、そうした書類を本人に手渡すべき意味は、大きいと考える。ともすれば、密室となりやすい側面を持つグループホームにこそ、こうした利用者保護としての視点を大切にしなければならない。

E精神障害者グループホーム

 グループホームの整備は進んでいるものの、地域的に偏在している傾向が解消されておらず、グループホームが整備されていない地域では、平成14(2002)年度から市町村において開始される精神障害者地域生活援助事業の実施が事実上困難となる状況にある。

 今後、地域の実情に応じて、精神障害者グループホームの整備を進めていくためには、医療法人によるグループホームの整備に加え、精神障害者の支援に実績のあるNPO法人による事業促進や精神障害者共同作業所の小規模通所授産施設への移行促進により、多様な事業主体を確保することが重要である。

 地域交流の場であるグループホーム入居者の日中活動の場が、設置主体の運営する施設に偏ることのないように、入居者へ地域社会資源情報の提供を行い、自由に選択できる環境を整える必要がある。

(5)ケアマネジメント・・・地域生活支援センターのあり方

 契約による福祉サービスの利用制度に向けて、その情報の提供から効率的でかつ有効な生活支援プランの作成とフォローアップなど、障害者本人やその家族にとって頼りがいのある障害者ケアマネジメント従事者が地域の中で活動をしていることが、今後の障害福祉にとって大きな意味をもっている。

 この障害者ケアマネジメントは、次のような特徴を重視している。

  1. 個別性を重視した援助
  2. 障害者本人の二一ズ優先
  3. 社会資源の開発
  4. 自己決定、セルフマネジメントを目標とした十分な情報提供
  5. 障害者自身のエンパワメントの重視

 身近な地域資源を熟知し、公的な制度的資源や制度外の私的な資源も時に組み合わせるなどの方法で「今を生きる障害者」の生活を支える仕組みを編み出す働きを期待したい。そのためには、多様な障害の理解を深めることをはじめとする養成研修の充実、さらには地域での具体的な事例検討の場作りなど実践的な現任研修の必要がある。

 市町村も地域で活躍しようとするこうした障害者ケアマネジメント従事者を大切に活用し、地道ではあっても着実に障害者の自立への基盤作りに取り組む良きパートナーとして一緒に歩く姿勢が、信頼される市町村行政に資するものと考えられる。

 誠実なケアマネジメントは、府において介護保険アテンダントが必要とされたように、障害のある本人の代弁活動をすることが重要となる場合があろう。地域で障害者の生活支援をめざすこの活動にもっと光を当てるべきである。家族のことを思うがゆえに、あるいは自己実現を図るために、家族から分かれて自立しようとする障害者にとって、あくまで本人中心の原則の上にたってケアマネジメントの5つの特徴に表されているように、その良き代弁者としてその役割が期待されているということである。利用制度化における対等な関係保持への保障の最前線に障害者ケアマネジメント従事者の姿を見出せることが、期待される。

 こうした点について、ヒヤリングをした市町村職員の意見でも、ケアマネンジメントと利用制度は不可分であるとの認識であった。

 また、こうした障害者ケアマネジメント従事者の配置について、NPOや小規模通所授産施設法人も含めて、地域の中のいろいろな所に相談の窓口が必要であり、その上に立って、総合的な相談窓口を設置する必要があるとの意見であった。日々の相談活動を具体的な支援に結びつけるためには、地域内の資源のネットワークが欠かせないとの報告もあり、そのネットワークの事務局にあたっているのが、地域生活支援センターであるとのことであった。どの事業者は、どのような活動を得意としているといったような地域の中の細かな情報に基づいたケアマネジメントが重要である。そして、それを有効な活動にするためには、今後は大きな供給基地がひとつといった形ではなく、多様な供給資源がおのおの得意分野を掲げながらそれのネットワークにより、視覚障害者、聴覚障害者、難病患者など多様な地域の障害者を支えるといった網の目的なイメージを地域の中に如何に配備することができるかに今後の地域支援の要諦があると考えられる。

 そして、その中核的な機関として地域生活支援センターは、地域の連携の網の目の核となることが必要である。

 現在、国はこの生活支援センターについて、障害保健福祉圏域ごとに身体障害・知的障害・精神障害者支援センターを各2ヶ所整備することを目標としているが、この配備計画はその展開の初期段階の当面の目標であったはずであり、目指すべきはより緻密な網の目配備である。初期目標を最終ゴールと誤認してはならない。当面の目標の30万人当たり障害種別々各2ヶ所の支援センターは、その構想段階では人口5万人当たり1ヶ所の障害横断的な支援体制構想であった。各々障害種別の枠を超えて支援に当たることが、支援センターの原則であり、そのためには地域内の支援センターは互いの顔の見える連絡体制が欠かせない。こうした支援センターを中心とした連携の網の目の上で、センターと連携のとれた地域の機関や施設職員、障害団体のネットワーク、身体障害・知的障害者相談員などの相談体制が有機的に機能する地域ネットワークの構築が目指すべきゴールである。

 この支援センターに関して、特に地域療育等支援事業は、府においては児童の療育と成人の生活支援の窓口を分離し、成人部門についてはその呼称も「生活支援センター」と府の要綱上明記するなど、意味づけを明確にする必要がある。今後、府においては成人知的障害者への支援策に「療育」という言葉を使用しないなどの提言も合わせて示しておく。

 また、精神障害者地域生活支援センターは、医療法人の設置によるものが先行しているが、今後は多様な主体の参入が必要であり、センターの事業は、設置主体がもともと運営する施設利用者のアフターケアに終始せず、市町村や保健所とのネットワークを重視しながら、地域の障害者が多く利用できる開かれた運営形態であるべきである。精神障害者地域生活支援センターには、個別支援にとどまらず、地域の住民への啓発活動や、関係機関をつなぎ、福祉情報発信を行う、いわば地域福祉の拠点になることが期待される。福祉サービスに関する情報が十分に行き渡っていない精神障害者は、どこへいってホームヘルパーやショートステイを申し込んでよいか分からないといった声が多い。

 また、障害児施策に関して、市町村とこども家庭センターは、利用制度下において、障害者ケアマネジメントの観点から、障害児を含め障害者個々のニーズに対応した形でケア計画が策定される必要がある。相談支援を行う際、これまで以上にこども家庭センター・市町村や障害者生活支援センターなどの地域の機関や社会資源との連携が重要となってくる。こども家庭センターは、支援費支給制度への移行に伴い、各種在宅福祉サービスに関して市町村での支給決定事務への支援や、障害児の相談支援に際して、支援費支給の決定内容を踏まえて、そのサービスに配慮をした関わりが必要となってくる。こうした点から、子ども家庭センターの果たす役割についても検討する必要がある。

(6)相談員制度の活性化

 知的障害・身体障害者相談員は、その制度創設の原点に返れば同じ障害者同士、同じ親同士という、まさしくピアの関係での相談活動であった。現在、ともすればその活動の不十分さが指摘されている相談員は、新しい時代に相応しい共感と受容の感性にあふれた相談員としてその活性化が図られなければならない。困難を抱えた障害者やその親が気楽に相談ができ、自己決定と秘密保持を最大限尊重する姿勢に裏打ちされた相談員が求められる姿である。研修の内容も制度的な知識の獲得だけではなく、相談・援助論といった側面の強化を手始めにし、相談員意識調査などを実施し、その上で、ある種の相談員倫理綱領などの制定も検討すべき課題ではないかと考える。

 また、精神障害者相談員については、法制度としての位置づけがなされていないものの、障害者同士、同じ親同士というピアサポートは、とりわけ精神障害者支援にとってその効用の高さを指摘することができ、地域生活を支える自助グループを育成する観点から、その制度化を推進すべきである。

 さらに、精神障害者相談員は、社会的入院の解消に向けた取り組みや精神病院内における処遇の改善などを側面から支援する人材として、その活用を図っていくべきであり、社会復帰施設や共同作業所はもとより、精神病院などへも自ら赴き、当事者や家族の相談に応じる姿勢が求められる。

 そのため、研修の内容についても、制度的な知識の獲得に加え、ピアサポートとしての「支えあう」姿勢を習得できるよう工夫を重ねていく必要があると考える。

3.就労・日中活動

(1)無認可障害者福祉作業所の今後

 大阪府は、平成9(1997)年補助の対象としている障害者福祉作業所に対して、今後の活動への意向調査を行った。

【平成9(1997)年府作業所調査結果より】

  • 平成9(1997)年11月実施。府内補助対象障害者福祉作業所243箇所による記名郵送アンケート方式。有効回答184箇所、回答率75.7%。
  • 活動状況
    「作業に重点をおかず、日中の憩いの場」は、23%。
    「簡単な自主製品、創作活動中心」が31%
    「軽作業中心」は、35%
    「サービス請負や高い収益を目指すもの」は、11%
  • 利用者に対する現在実施のサービス
    「グループホームのバックアップ」は、7%
    「介助者派遣」は、18%
    「ショートステイ」は、15%
    これらを地域の障害者にまで広げているところは少ない。
  • 今後の活動の方向性
    「現状維持」は、27%
    「他のサービス・支援活動を付加する」は、49%
    「今の活動を見直し、新たな展開を図る」は、24%
  • 今後展開したい活動
    「グループホームのバックアップ」が33%
    「ショートステイ」が30%
    「宿泊体験」が25%
  • 今後の展開方向
    「認可施設移行」は、67%
    「作業所間のネットワーク化による地域支援体制整備」は、45%
    「企業的色彩を強め、所得アップを図る」のが、29%

 作業所の多くが利用者のみに対する昼間の活動の維持で手がいっぱいであるとの意見も強い反面、この調査結果に現れているように、単に作業活動だけではなく、生活への支援活動への取り組みへの志向は、明日の方向性を示しているのではないかと考える。

 従来から、施設の地域開放の名の下に、認可施設は施設内利用者のみならず地域の障害者に対する支援の一翼を担うことが要請されてきた。大きな施設が1箇所あるよりも、小さくてもさまざまな得意分野を持った施設(資源)が地域内に点在し、それのネットワークを作り上げる以外に障害者福祉の地域での発展はないのではないか。

 こうした展開を実現するための一つとして、注目をすべきが小規模通所授産施設である。

 平成12(2000)年6月改正された社会福祉法により、法定化された小規模通所授産施設は、無認可作業所の法人化への道を大きく開いた。これにより、法内施設として、事業の安定化が図られ、それとともに公益事業としての社会的信頼性と透明性が高まり、税制上の優遇措置が図られ、職員の公的な福利厚生事業への加入が可能になるなど、事業自体への国庫補助以外にもその運営に資する部分が多く、ひいては利用者へのサービスの向上につながることが期待できる。資産要件や経理業務が移行へのネックとの関係者の意見も大きいが、個別の作業所ごとでの対応ではなく、同一府県内であれば、一つの法人が複数の小規模通所授産施設の経営が可能なことから市町村のリードなどにより複数の作業所の連合などが有効な方法ではないかと考える。作業所の目指す路線の違いなどによりこれらの連合形成が必ずしも円滑に進まないという実態を認識した上でも、なお、これからの障害者施策の推進のためには、障害者団体や関係者は互いの連携を強化し、地域福祉の推進に対して主体的な意識と取り組みが望まれる。

 この小規模通所授産施設が実施できるとされる付帯事業には以下のものがあげられている。

@障害児相談支援事業、身体障害者相談支援事業、知的障害者相談支援事業又は精神障害者地域生活支援センターを経営する事業
A身体障害者デイサービス事業又は知的障害者デイサービス事業
B身体障害者居宅介護等事業又は知的障害者居宅介護等事業
C当該小規模通所授産施設を利用する障害者等に対し、無料又は低額な料金で建物を賃貸する事業

 なお、知的障害者地域生活援助事業または、精神障害者地域生活援助事業を小規模通所授産施設の経営と併せて行うことについては、BとCを併せ読むことで可能とされている。

 これらの付帯事業の取り組みが、地域内でのネットワーク化のもと展開されれば、小規模通所授産施設化のもつ意味は重要なものになると考える。

(2)デイサービス施設化への道・・・デイサービスの今後

  今まで、府や市町村は作業所を、文字通り「作業をする所」としてしか見てこなかった、あるいは見ざるを得なかった側面があるのではないか。生産にばかり重点を置き、その実態に即した支援のあり方を検討するという意味での姿勢に乏しかったのではないかと考える。重症心身障害者の集う場としての作業所、精神障害者のサロン的作業所、むろん製造企業的な作業所などその実態はさまざまである。

 一方、重度の肢体不自由者や知的障害者、時に中途障害者にとっても、地域の中のデイサービスは、有用な機能を果たすと考えられる。フルタイム就労が、体力的に精神的に無理のある場合、その他の時間を過ごす場としても意味がある。高齢者のデイサービスのような入浴・給食・機能訓練以外のメニューとして、実施できればなお良いと考えられる。

 今後、デイサービスは、国の制度上のデイサービス施設のみで展開される施策のみに限定せず、柔軟な考え方が求められる。

 支援費制度の下、指定基準上ハード面での規定は当然予定されるが、デイサービスはある意味でソフトの事業と考えることが妥当なのではないかと考える。小規模通所授産施設の付帯的事業にも例示されているとおりである。

 現在でも、無認可作業所の認可移行後の身体障害者デイサービスについては入浴・給食サービスは例外的に実施しなくてもよいこととされており、また国資料「支援費に関する主な論点」では、今後基本事業を定めた上で、入浴・給食サービスについては加算方式を検討するとのことである。

 現在市町村事業である国のデイサービス事業も、利用制度に転換した後は、市町村自らも含めて各種事業者の参入が期待できるのではないか。小規模通所授産施設で少人数のデイサービスを展開し、半日単位のプログラムを用意するなど、その利用者の実態に即した展開を期待したい。府は、支援費制度の今後の推移を踏まえながら、こうした方向も含めて、無認可作業所の今後の方向性とその支援のあり方について具体的な検討を進める必要がある。

 さらに重症心身障害児(者)通園事業のB型(定員5人)は、原則として都道府県事業の位置づけではあるが、これの実態は重症心身障害者デイサービス事業である。あわせて、このB型施設の課題と展開方策についても検討する必要がある。

 また、資源の有効活用の観点から、一部の市において実施されている障害者福祉センター(デイサービス施設)での知的障害と身体障害のショートステイ事業のように、デイサービス施設の夜間利用により短期入所や障害者の自立生活訓練の場として活用など柔軟で資源の有効活用にも資する取り組みなども参考とすべきである。

(3)精神障害者の日中活動

 精神障害者の小規模通所授産施設は、第2種社会福祉事業に位置づけられているため、社会福祉法人のほか、NPO法人等にもその道が開かれている。この利点を生かしてともすれば医療法人に偏りがちな福祉資源を、精神障害者が地域になじんで暮らしていくためにも、地域の中に、小規模でも良いがより多数存在する方向が重要との認識が大切である。社会的入院者の受け入れには、まだまだ数多くの活動場所が必要である。

 また、在宅精神障害者をこうした活動の場へ「つなぐ人」が特に必要とされる。「利用してみようか」と思う体験をすること、対人関係でつまずいた体験のある人はそれを癒すよい人間関係の再構築があってこそ活動の場につながっていくと考えられ、当事者、ヘルパー、ピアサポーター、ボランティア等により働きかけが大切な要素である。

 そうした「つなぐ人」の供給体制の整備、育成、啓発、活動の場の情報の提供方法の開発等全体の仕組みづくりに地域生活支援センターなどが果たす役割が大変大きい。

 特に、対等な立場で仲間と過ごせる障害者同士が知り合う場所、機会や「同じ障害を持つ人の役に立ちたい」という希望を満たすセルフヘルプグループ活動もこうした仕組みには重要である。セルフヘルプグループ活動はエンパワメントでもあり、その活動が社会に認知されることが精神障害者理解を促す啓発にもつながる。今後は、精神障害者が活動を開始し、継続しやすい環境づくりへの援助が必要である。

 精神障害については、その障害の正確な情報が、当事者を含めた社会にまだまだ伝わっていない現状がある。精神障害への偏見は、施設コンフリクト等の問題のみならず、社会生活を送る上で障害を明らかにして活動することを困難にしている状況のみならず、服薬拒否など医療中断にもつながると考えられる。今後ともこうした点からも、行政機関や学校、地域などあらゆる方面への正確な情報による啓発が重要であり、マスメディアとも一体となって提供していくことが大切である。

(4)就労支援、障害者の可能性へのチャレンジ

 先に、無認可作業所の現状には重症心身障害者の集う場としての機能を果たしている部分もあることを記した。そして、その活動の実態に即した今後の方向への意見も述べた。

 無理なく集い、そして一人ひとりがその志向に沿った内容の活動を展開し、その人なりの参加が実現できることの重要性も述べてきた。

 しかし、その内容が10年・20年と変わることがないならば、その場の雰囲気は沈滞し、魅力に乏しい場に変質してしまうとの危惧も否定できない。作業とはいえぬ日中活動の場にも、ある種の厳しさは必要であり、それがそこに集う人たちの生きがいの芽があるとも言える。

 ここに、就労支援の大きな意味があり、またその就労支援活動の難しさが潜んでいるとも考えられる。

 創作的なデイ活動から、福祉的な就労への段階、福祉的な就労の場の生産性の向上への段階、福祉的就労からさまざまな就労への段階、雇用の場での支援の段階、それら各段階での橋渡しに必要とされる施策は、新計画策定に際して十分検討される必要がある。付言すれば、その橋渡しは必ずしも上への一方通行ではなく、雇用の場で疲れた障害者の受け入れなど相互の行き来を想定しておく必要がある。

 厚生省と労働省が一体となってから、従来の障害福祉に携わる職員の雇用へ結びつける努力の乏しさが指摘され始めている。あわせて、授産施設職員などの商品の取り扱いや生産に関する意識の低さ(最近になって、食品の賞味期間表示やPL法に対する意識が芽生え始めているが)が、だから福祉は甘いとの評価につながっており、こうした面での福祉関係職員の意識改革と啓発・研修、さらには専門技術職による技術指導などは、重要である。進歩や変化の無いところでの活動は、その活動の魅力を徐々にそぎかねない。

 就職をしても、多くの障害者がわずかな期間で離職をしてしまうことが多い。体力が続かない、人間関係のもつれ、仕事があわないなどの原因は、社会一般の傾向でもあり障害者に固有の問題ではないが、従来こうした問題に対しては、付随的なアフターケアの名の下で、その多くが「辞めてしまった後」の問題に関わっていたのではないか。そうした実態に対して、生活面での支援と職場内での就労支援を一体的に提供する「障害者就業・生活支援センター」事業には、関係者からの大きな期待とこの効果に対する評価の声がある。大阪府としても、本事業の府内での展開を図るとともに、市町村が主体となって障害者等の雇用・就労を支援する地域就労支援事業を推進するなど、積極的な努力が必要である。

 また、就労の場に対しては視覚障害者の職域拡大の方途としての高齢者施設での三療の導入、知的障害者の福祉施設での就労、官公需要の発注強化、IT利用による在宅就労のコーディネート、官公庁業務の外部化やワークシェアリング、職場開拓と実習先の確保、職場適応援助者(ジョブ・コーチ)の充実、聴覚障害者への手話通訳や要約筆記者の適正な配備、企業と福祉施設の連携など多くの事業課題があるので、今後新計画策定に当たっての十分な検討が必要である。

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