千葉・ちいき発


(参考)各分野における主な差別に当たると思われる事例と対応方策

  •  研究会では、700件を超える応募事例について分野ごとに担当委員を決め、その分析を基にしながら、差別とは何か、どうしたらなくしていけるのか議論を行ってきました。
  •  この中間報告は、その議論を取りまとめたものですが、時間的な制約もあり、分野ごとの差別事例に対する具体的な解消方策については、十分な論議を尽くすに至っていません。
  •  このため、分野ごとの差別事例に対し、各委員から提案された解消方策の内容については「参考」として掲載することとしました。これらの提案については、必ずしも研究会全体としてコンセンサスの得られたものではないことにご注意下さい。
  •  いずれにせよ、これらの提案については、今後の研究会において議論を深め、条例になじむもの、なじまないものの仕分けも含め精査することとしたいと思います。

1.募集した事例の位置付け
  •  この研究会では、7分野ごとに担当委員を決め、応募事例の分析を基にしながら、議論を行ってきましたが、この過程で、@全委員が応募事例の全原文を読むべきではないか、A差別された側の言い分だけでなく、差別をしたとされる側の言い分も聞くべきではないか、との意見が出されました。
  •  しかしながら、700件を超える事例について、
    @ 寄せられた事例自体、千葉県全体の差別事例から言えばほんの一部に過ぎないと思われること
    A 事例を募集した趣旨は個別事例そのものの解決ではなく、これを素材として差別をなくすための一般施策を検討することがこの研究会の役割であること
    B 全委員が全原文を読みながら研究会を進めることは現実的でないことから、議論を効率的に進めるため、分野ごとの担当委員が当該分野について必要に応じ原文に立ち返るにとどめ、むしろ代表的な事例を取り上げ背景まで深く掘り下げる、という検討方法を採ることとしました。

2.教育分野
(1) 「不利益取扱い」
@ 主な事例
  •  教育分野における「不利益取扱い」については、就学相談の場において、養護学校等への進学を強要されたとする事例(ア)や、通常の学校生活において特別扱いされたとする事例(イ)など数多くの事例が寄せられています。

    <アの代表的な例>
    小学校普通学級への就学意思を文書で明確に表明したにもかかわらず、市の教育委員会が養護学校適との審議結果を通知し、就学相談を迫り、何度も養護学校への進学を勧め、普通学級では対応できないとの差別的発言により精神的に追い詰められた。

    <イの代表的な例>
    就学後に行われる様々な取り扱い、例えば、評価すべき水準に達していないという理由で通知票が空欄のまま成績評価をしない、席替えをせず常に教師の前に配置する、常に黄色の帽子を目印としてかぶらされる、授業の時答えられないとかわいそうなので指名しない。

A 解消するための提案
  •  障害児教育については、盲・聾・養護学校等における特別支援教育のほか、学校教育法施行令における認定就学制度により、就学基準に該当する障害のある児童を認定就学者として小学校又は中学校に就学させることができるとされています。 教育に関する差別事例が分野的に最も多かった背景として、現在の教育制度自体が障害児と健常児の分離という分離教育を前提としており、障害者がいることが前提とされていないため、普通学級の環境が整わないことが考えられます。
  •  統合教育を原則とし、当事者の申し出に応じて特殊教育の場を選べるという制度とすべきとする意見がある一方、統合教育を原則とすることは、現在、養護学校に通学している生徒や保護者の不安を招く恐れがあり当事者の選択権を現実的に保障する方が重要との意見がありました。
  •  また、いきなり統合教育をすべての学校に義務づけるのは現実的ではないとして、例えば計画的に、モデル学校を作って、どうすればうまくいくかを皆で考えながら進んではどうかという意見もありました。
  •  また、教師による差別行為は、教育体制の不備と分けることはできず、個人の資質だけでなく、学校教育法などの制度・施策にその根本的要因があるとも考えらます。
(2) 「合理的配慮の欠如」
@ 主な事例
  •  教育分野における「合理的配慮欠如」については、通学時の保護者の付き添い・介助を入学の条件とする事例(ア)や、学校現場における人員増やバリアフリーの問題など人的・物的環境への配慮を必要とする事例(イ)が寄せられています。

    <アの代表的な例>
    就学前の学校との話し合いで保護者の付き添いを求められ、「親が付き添いにつくことを納得していただくまで何度でも話し合いましょう。夜でも休日でも家でも主人の会社でもどこでも行きますから」という脅しのようなことを言われ恐ろしくなった。

    <イの代表的な例>
    学校内の段差が多くスロープが少ないので自力での移動がなかなかできない、エレベーター等の設備が無いので2階以上で行われる授業への出席が大変、スロープに物が置かれていたり、車いすに対応した水道設備がない。

A 解消するための提案
  •  必要な「合理的配慮」として、本人及び保護者の意向を尊重しつつ個人の状況に応じて必要な配慮や支援が受けられるよう人的・物的環境を整備すべきです。また、個別支援の内容にしたがって学校全体で支援する体制づくりや専門家との連携に配慮するとともに、権利救済制度を設けるべきです。
(3) その他
  •  制度を変えていくために、まず、教育現場での差別や人権侵害をなくすための研修、障害児受け入れ状況と親の付き添い状況の実態調査を行うべきです。
  •  障害を持つ子どもは「子どもに対する不適切な取扱い(abuse)」「障害を持つ子どもへの差別」という二重の理不尽な扱いを受けるリスクを持っているので、障害者差別をなくすための条例とあわせて、子どもの権利条例も必要です。
  •  障害児が差別・排除される背景には、障害児への配慮が自分の子どもへの指導の低下につながることを危惧する一部の一般の保護者の考え方があります。一方で、障害児のいる学校に子を通わせたい、いろいろな子に交わる機会を設けたいという親も増えており、他の親に対して、障害児への理解をどう深めていくかも大きなテーマです。大人が変わらなければ子どもは変わらないとして、PTA団体による取組みも始まろうとしています。
  •  ある研究によれば、プログラムに参加した前と後では、若い世代のほうが意識が大きく変わる結果になっており、教育の場が差別と偏見をなくしていくために非常に重要です。子どもの時から、差別される悲しみが感じられるような情操・倫理教育が必要で、あわせて保護者に対する研修や啓発が必要です。
  •  また、障害児・者については、人生のどの段階においても教育の機会を優先的に保障するようすべての教育機関に義務付けるべきです。

3.労働分野
(1) 「不利益取扱い」
@ 主な事例
  •  労働分野における「不利益取扱い」については、求職・採用や昇格における差別事例(ア)、解雇事例(イ)等、様々な局面で、障害を理由とした差別を受けたとする事例が寄せられています。

    <アの代表的な例>
     大手企業で、入社面接で障害を理由に嘱託扱いにされ、10年以上就業するも未だに嘱託のままで、給料やボーナスも少ない。また、営業成績がトップレベルであっても契約社員のままである事例など障害ゆえに能力を正当に評価されず不利益を被っている。

    <イの代表的な事例>
     うつ病の薬を飲んでいるといっただけで解雇されたり、休職期間中の精神障害者に退職勧奨がなされた。

A 解消するための提案
  •  一般企業における就労について、企業は収益を確保するため、生産性に見合う労働力(障害の有無にかかわらず賃金に見合った労働)を求めざるを得ません。したがって、採用や昇格しないことがただちにすべて差別に当たるわけではありませんが、障害自体を理由にした解雇や不当な処遇をすることは差別に当たることを、雇用主、従業員や関係機関に徹底させる必要があります。
  •  就労をめぐる差別が頻発する背景には、企業自体も障害者の特性を把握できていない現状があります。企業に対して「どういう人にどういう仕事ができるのか」の情報を整理して積極的にPRする必要があります。また、雇う側も雇われる側も、「差別か否か」の入り口で立ち止まるのではなく、お互いに意見をぶつけ合って理解を深めていく過程こそが必要です。
(2) 「合理的配慮の欠如」
@ 主な事例
  • ○ 労働分野における「合理的配慮欠如」については、会社の会議で手話通訳をつけてほしいといっても「企業秘密があるから外部の人はだめ」と言われ、会議の内容がわからず意見を言うことができないという情報保障手段の欠如など障害者の就労環境に対する配慮がなされていない事例が寄せられています。
A 解消するための提案
  •  多様な障害への企業側の配慮について、理解の促進と対応に必要な費用負担等を考慮した上で、違反した場合の指導とチェック体制を含めて、何らかの法律的な規制が必要ではないかとする意見がありました。
(3) その他
  •  障害者雇用を促進するために、法定雇用率制度が設けられていますが、障害者に対して完全な合理的配慮をした上で自由に競争させるのが理想です。雇用率制度は当面の過渡的な誘導策であって、最終的な目標ではありません。合理的配慮をすれば働ける人には合理的配慮をした上で自由競争をさせ、合理的配慮を行っても同様の就労が難しい人にはなんらかの対応策をとるというのが基本的な施策の方向であるべきです。
  •  また、障害者を雇っている企業の経営が健全に成り立つように応援する仕組みが必要です。例えば、企業側が「障害のある人を雇っている」ということを積極的にPRできる仕組みを作り、県民がこうした企業を応援して、お客が増えるような仕組みについて検討すべきです。

4.医療分野
(1) 「不利益取扱い」
@ 主な事例
  •  医療分野における「不利益取扱い」については、診療時に医師から差別的な言葉を投げつけられたり、障害を理由として診療拒否など、本人の自由意志・要望に基づいた医療が提供されていない事例が寄せられています。
A 解消するための提案
  •  医療分野については、障害者差別であるかどうかという検討と併せて、例えば「同じ内容で障害のある方ではなかったとしたらどうなのか、それでもなお問題があるといえるのか、それは障害のある人特有の問題といえるのか」というように、いわゆるドクターハラスメントという視点で冷静に判断することが必要との意見が出されました。
  •  医療情報の提供や医療機関の紹介、療養上の相談とは別途、医療機関の利用をめぐる諸問題について気軽に利用できる公的な相談窓口を設置している自治体があります。千葉県においても医療安全相談センターを設置して医療に関する相談事業を提供していますが、「障害者差別に当たると思われる事例」が発生した場合に、医療分野における事例を解決・救済できる専門の機関や機能を設置することも検討すべきです。
(2) 「合理的配慮の欠如」
@ 主な事例
  •  医療分野における「合理的配慮の欠如」については、障害者の診察に付添い人を要求したり、乳幼児検診で起立不能な子の身長計はないといった障害特性に対応した医療体制・設備の不備にかかる事例が寄せられています。
A 解消するための提案
  •  受診する障害者と医療機関側との意思の疎通を円滑にするため、障害当事者やその家族、医師会、歯科医師会、教育関係者らの協力により「受診サポート手帳」が作成されましたが、この取組みを障害当事者や医療関係者に浸透させ、診療が一層円滑に行えるようにします。
  •  医療機関に手話通訳者等が配置されるような配慮が必要です。
  •  差別をなくしていくためには、医療関係の正確な情報の発信、正しい医学知識の普及を図る必要があります。また、治療や検査のガイドライン、学会が公表する専門医療機関関係の情報等の積極的な公開が求められます。併せて、障害について知る専門職員を各医療機関等配置するとともに、そうした職員の養成を促進していく必要があります。
(3) その他
  •  差別をなくすためには、医療関係者が障害について知るための教育・指導が重要です。
  •  精神科医療について、精神障害者の社会的入院そのものが既に差別であるとする意見がありました。また、親書の発受、電話、面会の制限、隔離室の使用や身体的拘束については、法や基準の範囲内で医療行為として実施されることがありますが、その運用の妥当性について当事者の参加も得て個々の事例に即して詳しく検証していく必要があります。

5.福祉分野
(1) 「不利益取扱い」
@ 主な事例
  •  福祉分野における「不利益取扱い」の事例として、障害児の母は働かないで子の面倒を見るべきとして保育所への入所を拒否された事例、重度障害で発作があるとしてショートステイの利用を拒否された事例のほか、施設内の部屋にカギをかけて閉じ込められるなどの虐待の事例も寄せられています。
A 解消するための提案
  •  福祉施設に対しては、虐待に関する法的規制がないので規制を強化し、事例によっては行政(警察も含む)が介入すべきです。福祉施設の第三者評価が全国で進んでいますが、本県においても、プロジェクト・ブレーメン「誰でも分かる福祉サービス評価システム作業部会」の検討結果等を踏まえてさらに推進する必要があります。
(2) 「合理的配慮の欠如」
@ 主な事例
  •  福祉分野における「合理的配慮欠如」については、災害時に補装具であるオストメイト用パウチの確保が困難であった事例、移動介護のサービスについて、ヘルパーの送迎ができなくなり移動手段が実費になったので利用しづらくなった事例が寄せられています。
A 合理的配慮の内容
  •  福祉サービスの供給に関する合理的配慮について、サービスが容易に受けられるよう人的・物的体制を整備する必要があります。
(3) 「差別」と福祉サービスの量的不足との関係
  •  特定の住宅や職場の利用について、健常者は認められるのに、障害があるという理由で認められない場合は、「障害を理由とした差別」に当たり得る問題です。しかしながら、そもそも利用できる住宅や職場の量が十分でないことについてはどう考えるべきでしょうか。
  •  福祉サービス等が不十分であることは、障害者の生活にとって大きな不利益であること は間違いなく、改善・解決に向けて取り組むべき課題であることは言うまでもありません。
  •  しかしながら、例えば、なかなか自分の気に入ったグループホームが見つからないとしても、障害がない人にも、その人のニーズに合った住まいが見つからないケース自体は十分起こり得る不利益とも考えられます。同様に、年金の額が十分でないこと、自分に合った職場が十分な量確保されていないことなども、障害者以外にも所得が十分でない人、失業している人などもいるわけであり、改善すべき不利益ではあることは疑いがありませんが、「障害を理由とした差別」とストレートに言い得るかについては議論の余地があります。
  •  諸外国の立法例や、国連で検討中の障害者権利条約においても、福祉サービスの不足の問題(社会権の侵害)については「差別の一類型」と捉えるのではなく、むしろ差別の問題(自由権の侵害)と同格・並列のものとして併せて改善を図る考え方が採用されています。
  •  また、サービスの絶対量を担保する予算額は、選挙で選ばれた議員が、その年度ごとに、様々な県民のニーズを総合的に考慮した上で判断する事項であり、条例で予め一定の額の確保を義務付けることにはなじまないという面もあります。
  •  もちろん、差別をなくしていく上で必要となる各種の合理的配慮には予算が必要なものも数多くあります。障害があるが故の差別をなくしていくために必要な予算は、当然確保されていかねばなりません。ここでの議論は、およそ「予算を必要とするものは差別になじまない」ということとは全く異なるものであることに留意する必要があります。
(4) その他
  •  保育所における障害児保育について、教育分野における統合教育と同様の問題が生じています。統合保育自体がまだ進展しておらず、障害児に対応した保育体制の整備がすすんでいません。統合保育に関する人的体制の整備、相談機関の整備が今後の課題となっています。

6.サービス提供分野
(1) 「不利益取扱い」
@ 主な事例
  •  サービス提供分野における「不利益取扱い」については、障害者5名と引率者2名で入店しようとすると「障害者の方はちょっと」といわれ入店を拒否された事例やバスツアーへ申し込んだところ、障害者は付き添いがあってもだめだと言われた事例などが寄せられています。
A 解消するための提案
  •  障害者に対する理解と共感を深めるために広報啓発活動を強化する必要があります。
  •  情報公開によって、障害者の利用を拒否する店の情報を何らかの方法で公開します。逆に、障害者に配慮しようと努力している店を評価する方法を考えます。
(2) 「合理的配慮の欠如」
@ 主な事例
  •  サービス提供分野における「合理的配慮欠如」については、飲食店で点字のメニューがないため、店員にメニューを読んでもらっていたが、忙しそうだったので、読み上げの途中で決めざるをえなかった事例や車いす利用者がアーチェリー場で使う畳を持ち上げられず、従業員に頼んだらここに来る時は、手伝う人を連れてきてくださいといわれた事例などが寄せられています。
A 解消するための提案
  •  福祉施設への手話通訳の配置の義務づけ、施設職員への手話通訳研修の義務づけ、障害者割引料金の適用拡大などを検討すべきです。公共機関、ホテル、会場などの管理者に対し、その設備に関する障害者への配慮について行政が徹底して指導すべきです。
  •  一方、解消するための提案を検討するにあたっては、個々の社会的優遇措置が、過度の優遇になっていないか検証していく必要があります。

7.不動産の取得・利用分野
(1) 「不利益取扱い」
@ 主な事例
  •  不動産の取得・利用分野における「不利益取扱い」については、障害を理由とした賃貸契約拒否の事例(ア)が多く寄せられています。また、契約当事者のみならず周辺住民との関係で、結局契約が成立しなかった事例(イ)も寄せられています。

    <アの代表的な事例>
      聴覚障害者は、聞こえないので何かあったら困る。保護者がいないと心配などとして契約を拒否された。

    <イの代表的な事例>
    生活ホーム用の家を探していた時、障害者が隣に越してきたら他の人が出て行ってしまうといって拒否されたり、障害者は怖いとして施設の建設を反対された。

A 解消するための提案
  •  不動産業者が、不当な契約条件を要求した場合の相談窓口を設置し、業者への指導を徹底すべきです。
  •  社会福祉施設建設時の周辺住民との関係について、グループホーム設置時に住民説明会の義務づけを撤廃すべきです。また、周辺住民の理解を深めるために、行政が仲介し、正当な理由のない場合の住民反対運動を取りやめるような話し合い、お互いの協議の場を作ることが必要です。
(2) その他
  •  民間住宅の提供がすすまない現状に対して、公営住宅について、障害者の利用優遇措置を導入し、公営住宅の利用促進を図ることが提案されています。

8.建築物・交通アクセス分野
(1) 「不利益取扱い」
@ 主な事例
  •  建築物・交通アクセス分野における「不利益取扱い」については、コミュニティセンターや県営住宅集会所において、車いすでの立ち入りを禁止された事例、知的障害者がひとりでバスに乗ろうとしたら、運転手が乗るな降りろと命じた事例などが寄せられています。
A 解消するための提案
  •  ハートビル法等の法の趣旨を建物の管理者に徹底させるとともに、障害者への理解と共感、障害者問題一般に対する広報啓発活動を強化する必要があります。
(2) 「合理的配慮の欠如」
@ 主な事例
  •  建築物・交通アクセス分野にかかる「合理的配慮の欠如」については、建築物関係で車いす移動の障害になる店内の狭さ、障害者用トイレの未設置などの事例が寄せられています。また、交通アクセス関係では、乗換え案内や事故遅延情報が聞こえないという聴覚障害者の訴え、ノンステップバスの運行状況がわからない、急いでわたっても歩行者信号が点滅してしまうという身体障害者の訴えが寄せられています。また、身体障害者用のトイレについて、男女共用となっている点について問題が提起されています。
  •  交通事業者は電光掲示板を整備し、画面で操作できる機械を開発すべきです。
(3) その他
  •  ハートビル法、交通バリアフリー法など、法規制の対象や範囲が限定されていたりするため、それらを統合したユニバーサルデザイン法を検討すべきです。なお、さきごろ国土交通省では改正ハートビル法、交通バリアフリー法の統合を含めた「ユニバーサルデザイン政策大綱」を策定しており、今後は大綱を踏まえた本県の取組みが検討されるべきです。
  •  車いす利用者用の駐車場が設置されているにもかかわらず、車いす利用者の優先的な利用が妨げられている事例があるので、広報啓発を強化すべきです。

9.知る権利・情報分野
(1) 「不利益取扱い」
  •  知る権利・情報分野について、障害を理由としてある一定の情報を知らせないという形態での「不利益取扱い」の事例は寄せられていません。情報取得の困難性、事実上の知る権利の侵害の事例は数多く寄せられていますが、それらの多くは次の合理的配慮の問題に帰着します。
(2) 「合理的配慮の欠如」
@ 主な事例
  •  知る権利・情報分野における「合理的配慮欠如」については、ホームヘルパー講習会に手話通訳の予算がないという理由で聴覚障害者が参加できなかった事例、自治体の広報が電話番号のみの記載で聴覚障害者が照会できなかった事例、講演会で手話通訳しか配置されず要約筆記の配置を要求したところ拒否された事例などが寄せられています。
A 解消するための提案
  •  事業予算をとる時にはまずあらかじめ情報保障の費用を取っておくというシステムを確立する、市役所に要約筆記者を配置する、広報紙等に電話以外の連絡方法を記載する、テレビの字幕放送を促進するといった情報取得手段を保障すべきです。
(3) その他
  •  手話通訳や要約筆記は聴覚障害者にとっての大切なコミュニケーション手段であり、手話は一つの言語であるということを、広く認識させる必要があります。

10.参政権分野
(1) 「不利益取扱い」
@ 主な事例
  •  参政権に係る「不利益取扱い」の事例として、成年後見制度による被後見人の選挙権喪失について、制度を利用するのをためらう、選挙権喪失を本人に伝えられないなどの事例が寄せられています。
A 解消するための提案
  •  公職選挙法第11条第1項は、選挙権及び被選挙権を有しない者として、第1号に「成年被後見人」を掲げています。確かに選挙権の喪失は国民の基本的な権利に関わる問題ですが、被後見人の法律行為等に関する判断能力の欠如が成年後見制度適用の基準であることに鑑みると、十分な検討のもとに法改正への働きかけを行う必要があります。
(2) 「合理的配慮の欠如」
@ 主な事例
  •  参政権に係る「合理的配慮の欠如」については、選挙の時に、手話通訳をつけてほしいとお願いしたらひとりのためには余裕がないと言われたという事例が寄せられています。
A 解消するための提案
  •  障害者の参政権における平等な機会の徹底した配慮についても取り上げるべきです。

11.司法手続分野
@ 主な事例
  •  司法手続分野における「合理的配慮欠如」の事例として、交通事故の現場での事情聴取の際、手話通訳を呼ぶ方法がなく、警察が相手方の言い分のみ認め、反論できなかった事例が寄せられています。
     また、判断能力にハンディのある知的障害者や重度の精神障害者が逮捕された際に、黙秘権などいかなる容疑者にも認められている権利を分かりやすく伝えたり、障害の特性に配慮した取り調べが行われることが確保されないことが考えられます。
A 解消するための提案
  •  警察・司法関係者に対し、障害者の人権に関するさらなる教育の徹底を図る必要がある。
  •  事故・事件等の場面では、障害者の人権を守るため、迅速かつ柔軟な情報伝達手段の確保が重要であり、警察等司法機関に対しコミュニケーション手段の整備充実について配慮を求めるべきです。

12.呼称分野
@ 主な事例
  •  呼称分野における主な事例については、障害者と呼ばれることによってレッテルを貼られ、自分は普通ではないと感じる人が多くいます。この言葉自体が障害を持っている人といない人を分ける偏見につながる言葉です。例えば、各種福祉サービス利用における障害者の記載、バス定期券の「障」マーク、精神障害者バレーボール大会という呼称などに差別感を感じるという事例が寄せられています。
A 解消するための提案
  •  「障害」「障害者」という呼称については、特に「害」という文字に否定的な意味合いが強く、表記に差別感を感じる当事者が多くいます。この点について、障害を持った人を示す用語として定着した言葉がないのも事実であり、また、言葉だけ代えても実体が伴わなければ意味がないという議論もあるので、今後幅広い県民的議論が必要です。
  •  「精神障害者」「精神科」などの配慮のない使用が個人や障害一般への偏見を助長する可能性が指摘されています。医療・福祉機関や公的機関での使用・関係書類の記載について配慮すべきです。
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