シンポジウムの部屋

主催:朝日新聞社
後援:厚生省
協賛:山之内製薬株式会社

 この日本には、現在、「寝たきり老人」が60万人いる、と言われます。しかし最近、驚くべきことが判明しました。「寝たきり老人」の大半は実は、お世話の人手をかけさえすれば起きて車いすの生活ができる人でした。その証拠に、介護の人手を惜しまない北欧では「寝たきり」現象がありません。「寝たきり老人」という言葉もありません。日本で「寝たきり老人」と呼ばれている人々の多くは、実は「寝かせきり」で放って置かれた人々だったのです。デンマークの高度な高齢者支援システムを築いた中心人物、元社会大臣のB・R・アンデルセン教授が先輩国家の実情を紹介し、日本の4人の専門家が問題点を指摘。満員700人の方々は、熱心にメモを取りながら聞き入りました。

<パネリスト>
南小倉病院院長  矢内 伸夫さん
ヘルパースキル研究会代表  井上 千津子さん
厚生省病院管理研究所主任研究官  外山 義さん
阪南中央病院内科医長  岡本 祐三さん
<司会> 大熊 由紀子 朝日新聞論説委員




北欧などの実践に学ぼう

基調報告:市町村に権限と財源 〜きめ細かく有機的支援〜

デンマーク元福祉大臣 B・R・アンデルセンさん

アンデルセン:デンマークの高齢者福祉で一番重要な人たちは2万7000人のホームヘルパーです。みな市町村の職員で、ハンディを持っている人を日常生活のあらゆる面でサポートします。デンマークの510万人の人口のうち62歳以上は89万人。このうち16万人がホームヘルパーの助けを受けています。

― 重度障害でも自宅生活 ―

アンデルセン:現在、約半分の市町村が24時間態勢でホームヘルパーと訪問看護婦の在宅ケア支援のシステムを行っています。残りの市町村は、朝7から夜11までの態勢です。この制度があるために、かなり重度の障害を持った人でも住み慣れた自宅で生活できます。

 市町村は体が不自由な人や料理が苦手な高齢者のために配食サービスを365日行います。さまざまな補助器具、たとえば、電動ベッドや車いす、食事に使う小道具を提供する義務もあります。住居の改造、たとえば、敷居を取ったり、ドアを広くしたり、2階あった風呂を1階にするのも市町村の仕事です。  孤独にならないように、いろいろなクラブ活動や昼を過ごすデイセンターも用意します。  病院、家庭医、クラブ、家族などを訪ねるときの送迎サービスを提供する義務もあります。  ほとんどが無料です。

 自宅で生活できない、あるいはご本人が家では自信がないという場合にはプライエム(日本の特別養護老人ホームに当たる施設)があり、市町村立で約5万人分用意されています。デンマーク人は個人の尊厳、個人の自由を大切にしますので、個室で、自分の家具を持って入居します。ご夫婦には2部屋を提供しますが、たいていの場合、1方の部屋を寝室に、もう1つを居間に使っておられるようです。自宅のほかに団らん室、訓練室、趣味室、図書室など、交流の場があります。

 職員と入居者との割合は1対1、1年間の経費は、日本円にして1人当たり約450万円です。

 デンマークは自治体の力が非常に強く、275ある市町村は、独自に市町村税を決めることができ、それは所得税のなかに含められます。22パーセントの消費税も含めたあらゆる税の3分の1が市町村で使われています。市町村に権限と財源があると、対応が早くなり

ます。いろいろな施設やサービスを有機的に連携させることも可能です。

 例えば、目が悪く、高齢で、重いリューマチで、失禁と軽度なぼけがある女性がおられるとします。住宅も古いタイプでエレベーターもない。この女性が、自分で眼鏡屋を探して、あるいはボランティアの組織を探して、それぞれにサービスを要求する、あるいは買うということは、全く不可能です。この人は短期間に痴ほうが重くなって病院に入院するしかなくなるでしょう。 けれど、こういう問題をすべて市町村の1ヵ所で対応できると、効率的で、きめ細かなサービスを提供できます。

― 入院後、早期に作業療法、理学療法、言語療法 ―

アンデルセン:ここで今日のパネルディスカッションのテーマである、「寝かせきり」についてお話ししたいと思います。日本に3日ほど前に来て、この問題の深刻さを知りました。デンマークでは寝たままの状態の人はごく少なく、そのほとんどが、癌などの末期患者です。脳卒中の後遺症で6カ月以上寝たきり状態という人はめったにおりません。

 脳卒中を起こしますと、入院後出来るだけ早く作業療法、理学療法、言語療法を行い、必要なさまざまな補助器具を提供します。退院後は先ほど申し上げたような援助のネットワークがあります。市町村の訪問看護婦が3500人ほどいて、薬を正しく飲んでいるかどうか、ケアが適切に行われているかどうかなどを把握します。
 ですから、日本におられるような「寝たきり老人」ができないのです。

 デンマークでも1970年頃までは専業主婦である娘や息子の妻が孤独を慰めたり、生活上のいろいろな援助をしておりました。女性が社会進出するようになり、1960年から89年までの間に、専業主婦は4分の1に減りました。その流れのなかで、高齢者福祉の分野で働く人が増え、60年の2万5000人に対し、89年は7万9000人になっています。

 60年代ごろから福祉をよくしていこうという国民的な合意があって、実態調査をし、いろいろな委員会を作って議論し、70年から76年の間に福祉関係の法律がいくつもとおりました。1000以上あった市町村を70年に275に統廃合し、福祉サービスを1つにまとめ窓口をひとつにしました。ハンディを負った人の身になって対応する法律をつくったのです。

 デンマークは図のように国民総生産の51.9パーセントが公的支出にあてられていますが、高齢者の福祉に使われているのは7.8パーセントにすぎません。しかも半分以上の4.2パーセントは年金です。どの国も年金支出のCNP比はこのくらいです。
 高齢者の福祉サービスに使われているお金は3.6パーセントです。私の国ではこれを高いと思う人はいません。

― 資本主義で自由競争のくにだけれど、教育、医療、福祉は公的責任で ―

アンデルセン:北欧社会は、日本と同じ自由競争の資本主義の国です。ただ、教育、医療、福祉のような国民みんなが必要であると考えている問題は公的責任で行う方がよいと考えています。そのためには税金を払わなくてはなりません。

 「アイゼンハワー仮説」というのがあります。「税金が高く、公的セクターが大きくなると国民の労働意欲がなくなる」というのですが、この仮説は崩れました。労働意欲を就労率で見ますと、デンマーク人は男性も女性も世界で一番高いレベルにあります。

 カトリック系の国々は、高齢者福祉について北欧とは異なった道をこれまで歩んできました。たとえばスペイン、イタリアは、論理的、習慣的、法律的に子が親の面倒を見ることになっています。
そういう国では、世代の間によく緊張が起こります。家族の崩壊が起こります。そういう緊張感を何らかの形で和らげようとして、しばしば選ばれる方法は、施設にあずせることです。子供にとっては、特別な出費になるわけですから、なるべく安くすませたい。それにこたえて、安いけれどサービスの悪い民間のナーシングホームが増えています。同じ問題は、アメリカでも起こっております。
高齢者の死によってのみ皆が楽になる。これは非常に悲しむべき状態だと思います。我々としては、そういうことならば税金で公的なサービスを十分に整えようと考えます。

 日本の「在宅寝たきり老人」といわれる方々の現状を昨日と一昨日見せていただきました。お世話しているご家族の努力には頭が下がります。しかし、主婦にすべてを頼るというようなやり方を続けていけば、恐らく世代間での緊張が増し、地中海諸国のように、家族崩壊も起こるでしょう。同居率が日本でも減ってきており、この10年間に高齢者の単独世帯がふえて倍になってと聞いております。北欧の高齢者福祉は、まさにこういう家族形態の変動に対応する形でできてきたものです。

 デンマークのいろいろな経験から、インスピレーションを得ていただいて、それが日本のために何かお役に立てばこの上ない幸せです。


<パネルディスカッション>

「寝かせきり」ゼロめざし

大熊:パネリストをご紹介します。

 矢内先生。寝たきり状態のお年寄りを起こして普通に食事ができるように変え、老人医療のあるべき姿を見せてくださっています。

 井上先生。中学校の先生から家庭奉仕員に転じられました。ホームヘルパーの専門技術を磨く研究会の代表でもあります。

 外山先生。スウェーデンでお年寄りの心と住環境を研究して博士号をとり、この春帰国なさいました。

 岡本先生。訪問医療の傍ら、アメリカ、イギリス、スウェーデンにも行かれて、研究活動もしておられます。

 まず、矢内先生の実践から……。

医療+生活リズム――矢内伸夫さん

矢内:我々が医学部の学生のころは、1、安静、2、栄養、3、治療法と順番を書かないと点が取れなかった。ところが、疾病構造が変わり「治らなければ、死んじゃう」のじゃなしに「治らず、死なず」の人がたくさん出てきました。こういう方には医療より、「生活」が重要です。生活を楽しく、あるいは生活にリズムをつくっていくと寝たきりのお年寄りの95パーセントは起きられます。

 寝かせきりにしますと、二次的にいろんな病気、障害をつくってしまう。「廃用性症候群」です。病院によっては、食事に手がかかるとなると、鼻からチューブを入れちゃう。管理する側は非常に効率的なんですがお年寄りはどんどん悪くなる。

 入院して悪くなって、退院してよくなる。こんなばかなことがありますか。それが現実だということを考えなければなりません。

日本の介護 家族犠牲に――井上千津子さん

井上:日本の在宅介護は、お年寄りの我慢と家族の犠牲の上に成り立っています。家族は疲れ果て「自然に目が覚めるまで寝ていたい」と言います。寝たきりのお年寄りは「うんちやおしっこの出ない食べ物はないでしょうか」と言います。介護者が高齢であったり、病弱だったり、職業を持っていたりして、家族が介護力になり得ないのが現状です。

 私の訪問先に、ご主人にも子供にも先立たれた76歳の方がいました。ヘルパーの週3回の訪問では9食分しかできません。近所の82歳のお年寄りがお世話をしてくださることになったのですが支えきれず、特養ホームの入所を申請しましたがご多分に漏れず順番がこない。仕方がなく主治医の力添えで入院しました。病院に入りましたら、あっというまに寝たきり状態となり、10日で床ずれが出始め、経管栄養になり、目も開かず、表情もなく、目の輝きもなく、まくら辺に立つ人の顔さえ分からなくなってしまいました。
 このお年寄りの入院とは一体何だったのでしょうか。

大熊:日本のホームヘルパーは人口当たり、デンマークの数10分の1ですね。

井上:ええ。どんなに優秀なヘルパー、保健婦さん、お医者さんがかかわったとしても、実際に日常的な具体的な援助をするヘルパーが何人いるかという量の問題を無視しては、人間らしい在宅生活は成り立たないと思うんです。現実はいまいるヘルパーの数で対応できるニーズしか探し出そうとしない、対応しないのです。在宅介護は、「まず、人ありき」ではないでしょうか。

健康な部分 生かす視点――外山義さん

外山:スウェーデンの1950年ごろがいまの日本に似ています。当時、老年人口が10パーセントを突破し、老人ホームの個室化が大議論になりました。女性が社会に進出して家庭で高齢者をケアする力がなくなっていきました。違うのは、スウェーデンでは第二次大戦が終わって、軍事に向けていた金をどうするか、国民的な大議論が起こったことです。
 減税で国民に還元するか別のことに使うか、結論として福祉に使う決断がなされたのです。

 1975年「スタッフの助けを得れば、本来ベッドから起きて生活できる老人が1日中寝かせきりになっているケースがある」という報告が出て問題になりました。85年の同じ調査では、この値が大幅に減り、1日中ベッドにいる状態の高齢者は施設では約3.6パーセントだったという報告が出ています。

 この間にどういうことが起こったのか。医療関係者が、従来は主に患者さんの疾病部に注目していたのを反省し、残された健康な部分に注目して、それを保持していこう、活性化させていこう、というふうに視点を変え、それを具体化する方法を積み上げていったのです。そしてベッドから車いすへ、部屋の外へ、そして地域の中へと、日常的な動きの範囲を再び広げていくための器具の開発や普及、居住環境の整備、町づくりがなされていきました。

"生きている土左衛門"つくる――矢内伸夫さん

大熊:矢内先生はご自身リューマチで、昨年から車いす生活ですが。

矢内:ホテルも東京で私が使えるようなところは数軒しかないですね。それにどうしても介護の助っ人が必要です。幸い私は病院の専門の連中がついてきてくれますので何とかなっていますが、普通の方だったらさぞ不自由でしょう。建物だけでなく都市全体が車いすで動き回れるようになっていることも大事です。

 床ずれの話が出ましたが病院の中には、床ずれ専門病院というのがあります。治すんじゃなくて作る病院(笑い)。理由は簡単です。生きている土佐衛門をつくっているんです。点滴をたくさんやったりして水バランスが悪くなってきますと、むくみが出てくるし、べろっと皮がはげてくるし、そうなってくると、床ずれはできやすくなる。最終的には皮膚の移植までしなければならないことになるんですけれども、医療費がかかるだけで、寝たきりにしてしまう。

看護婦の不足が問題――岡本祐三さん

大熊:先進諸国の病院が床ずれをつくったり、寝たきりをつくったりということはあるんでしょうか。

岡本:アメリカにはあります。悲惨なナーシングホームを見てがっくりしました。ところがイギリスを見たら、だいぶ元気を回復しまして、北欧でもっと元気になった。日本では先ほど矢内先生がおっしゃったようにたくさんの病院が寝たきりを床ずれをつくっています。

 イギリスでは「ベッド・イズ・バッド(ベッドに寝かせたままは悪いこと)」と何度も言われました。ただし、病棟の看護婦さんの数が日本の3倍です。デンマークの県立病院では、病棟の中に普通の家のダイニングキッチンみたいなものがつくられているんです。ここで実際に車いすを使って日常の生活動作を一生懸命訓練します。病院の作業療法士は退院前に家まで出向いて、手直しすべきところは手直しして、地域の訪問看護婦とも登壇する。そして家に帰す。こうした手間をかけたケアだから「寝たきり」にならずにすむんです。

 その条件として人手を無視できない。国際的に見ても人手の少ない施設、病院ほど「寝かせきり」の率がふえます。日本では脳卒中で命が助かった後の急性期のリハビリを満足にできる病院は6割ないかもしれません。高度な医療器械がないとかいうんじゃなくて看護、介護の職員が足りない。日本の病院ですと、100床当たり、総職員数が77人です。アメリカが269人、デンマークでも224人、日本は3分の1以下です。
日本の医療費は国際的に驚くべく安くあがっているというのが定説ですが、それは看護とか介護職員をものすごく切り詰めているからです。それが本人の我慢とか、家族付き添いとか、お世話などの家族負担に転嫁されているわけです。在宅老人へのサービスの少なさは、これと同根のものだということを強調したいと思います。

プロの介護職の役割は――井上千津子さん

大熊:井上先生、ため息ついてらっしゃいますけれど。

井上:せっかくリハビリなどを受けて家庭に入ってきても、車いすが使えない、ベッドが入らない。どこをどう直せばいいのか分からない。作業療法士や理学療法士が家庭に入って、指導したら、もう少しよくなるのではないでしょうか。老夫婦の場合は共倒れ寸前の状態になります。一度は共に死のうと思ったけれども果たせなかった、というような悲しい言葉をしばしば聞かされます。

 車いすがとても入らない家で台所のいすをちょん切りまして、キャスターをつけてみたんです。その簡易の車いすでトイレに行って排せつができるようになった妻は、日常生活に積極的になりました。トイレまで行く間に、廊下の窓から外を見ることに生きがいを見いだしました。夫もつきっきりの介護から解放され、ゲートボールに出たり、老人クラブの旅行にも出られるようになり社会性を回復しました。プロとして介護職が入った場合は、発生している問題をきちんと理解して、改善する方法を発見して、それを組み立てて介護することが大事になると思います。

大熊:介護職の力量次第で私たちの老後が暗くもなり、明るくもなり、質が違ってくるのですね。

矢内:お年寄りは、明るい雰囲気の中で、食べることの楽しさを味わうと人が変わる、というか元へ戻るんです。私どものところは、130数名全員が1日のうち、6時間から8時間はベッドから離れています。面会に来られる方が月平均のべ1400人、ほとんど毎日来ている方もいらっしゃる。これが非常にプラスになって、むくむくと起き上がってくる。

岡本:日本だったら「寝かせきり」にされるような人のデンマークでの1日を模式図にしてみました。1人目のヘルパーが8時に起こしにきます。着替えを手伝い、車いすに乗せ、朝食の支度、ベッドメーキング、いろいろやって9時に帰ります。看護婦さんは別途にやってきて注射をして帰る。
 2番目のヘルパーさんは洗濯、掃除、買い物、お年寄りご本人が億劫がっても「外へ出ましょう」と必ず連れ出す。夜のヘルパーの仕事もあります。こういう広がりを持つ援助が「寝かせきり」をなくすために非常に大事だと思います。
 玄関からのスロープも市町村が無料でつける。全部がシステムとして援助されています。こういう福祉的な発想が、特定の障害者とか、老人とかじゃなくて、だれにとっても住みよい社会につながるんだと、こういうふうにとらえていかないといかんのじゃないかと思いました。

すべての住宅にバリアフリー義務づけ――外山義さん

外山:スウェーデンは1975年に建築法が改正されまして、有名なバリアフリー条項というのが入りました。この法律が発効する1977年7月1日以降に建設されるすべての住宅は、年をとったり、障害などによって移動機能や方向感覚の低下した居住者にも住みこなせるようにすること、それから、3階以上の住宅には昇降機をつけることを義務付けたのです。障害者が住んでいる住宅の場合には、この規定を既存の建物にも遡及するという条項もくっついています。

 改造するためにかかる費用を援助する制度もあります。収入の有無とか、多少にかかわらず全額支給されるわけです。希望する改造案を提出し、地方自治体のほうから査定する人が訪ねてきて、双方でやりとりすという形になります。

 高齢化の問題が、われわれみんなが直面している住宅の問題、医療のあり方、男性と女性の役割・協力の仕方などを見直し、改造してゆくよい契機になるよう、取り組みの幅を広げてゆく必要があると思います。

大熊:デンマークには日本人のイメージの「寝たきり老人」がいないことは分かったのですが、福祉にお金がかかって財政が破綻すると大変、とお考えの方もいると思います。高齢者福祉の経済的な差引勘定はどうなのでしょうか。

自宅生活で逆に経済的――アンデルセンさん

アンデルセン:たとえば、助けを呼ぶと10分以内に訪問看護婦とホームヘルパーが駆けつけてくる在宅ケア24時間態勢の試みが10年ほど前から始まっていますが、高齢者のための安心感と同時に経済性もあることが分かりました。

 人口4000余りのある自治体では24時間ケアが始まったら病院のベッド10床分とプライエム50人分が要らなくなり、2億5000万円浮きました。24時間ケアにしたための経費1億5000万円を引いた1億円が節約できたことになります。高齢者が安心して自宅で生活できるようになった、それが最も重要なことですが、経済性もあったということです。

体起こすと表情変わる――大熊由紀子

大熊:ありがとうございました。安心感と経済性が両立するという分析、大変心丈夫に思いました。

 人類は、すでに、400万年立って歩いています。起きる、寝ると昼夜繰り返すのが一番からだに合っているのだと思います。寝たままを続けていますと、骨からはカルシウムが抜けていってしまいますし、心臓も肺も機能が落ちてきます。体を起こしますと、今まで天井しか見てなかった人が、人と目を合わせられる。にっこりする。こちらも、ほほえみを返します。表情がどんどん変わっていきます。

 介護のプロであるホームヘルパーさんたちの量と質、医療関係者の意識改革、やさしい建物や町づくり、それをバックアップする行政、政治の変革によって、「寝かせきり」の高齢者をゼロにする作戦は、かならず成功させることができると思います。皆様方おひとりが力を尽くしてくださいますように。

 アンデルセン教授、通訳して下さったコペンハーゲン大の伊東敬文先生ありがとうございました。(拍手)

▲上に戻る▲

シンポジウムの部屋・目次に戻る

トップページに戻る