千葉・ちいき発


やっぱり必要、みんなで作ろう!46

熱気!各地の勉強会

 流山に続いて、22日は野田市で、24日は市原市で条例の勉強会が開催されました。地元の市民が主催したものですが、両会場とも県議・市議や行政関係者や福祉関係者が参加して、熱い議論を交わしました。障害者とは無縁だったという市民もいました。「どうして反対されるのか、まったく理解できない」「条例が成立するために私も一生懸命働きたい。何をすればいいのか教えてください」との発言が相次ぎました。その一方で、「11条の文言をもう少し変えてはどうか。親の思い通りにすることが子どもに良い教育を与えるとは限らないのでは」など、教育関係の条文修正を求める意見もありました。いずれの会場も、障害者の置かれている厳しい状況に涙を流す参加者がいました。

福嶋浩彦・我孫子市長、八代英太・前衆院議員も登壇予定

 我孫子市(6月2日)の勉強会には福嶋市長が登場、市川市(同3日)は前自民党衆院議員の八代英太さんが基調講演をします。八代さんは障害者基本法改正に尽力した人で、千葉の条例案を誰よりも応援してくれています。忙しい最中、東京から駆けつけてくれます。これからの勉強会のスケジュールを別紙に紹介します。ぜひ参加してください。

なぜ条例が必要か考える座談会

 知的障害者の親などでつくる「全日本手をつなぐ育成会」(約30万人)が6月4日に千葉・幕張で権利擁護セミナー「なぐられない!奪われない! 笑われない!〜なぜ法律・条例が必要か考える」を開きます。研究会の野沢座長、佐藤副座長らによる座談会の抜粋を紹介します。全文はセミナーで配布する資料に掲載されます。ほかの発言者は以下の通り。

黒岩海映弁護士(日本弁護士連合会で差別禁止法案をつくり事務局)
村山園さん(市川市手をつなぐ育成会副会長)
大塚晃・厚生労働省専門官

野沢 千葉県の障害者差別をなくす条例案は2月議会で継続審査となりました。国連も動いていることをふまえ、なぜ法律や条例が必要なのかについて、もう一度確認したい。40数カ国で法律があるとよく言われていますが。
黒岩 差別禁止法の法体系は、民事法、刑事法、憲法、社会福祉法の一応四つに分類されています。われわれが範としているADA(アメリカの法律)とDDA(イギリスの法律)は民事法体系です。差別について一番明確で、要件・効果をきっちり示しています。フランスは刑事法、ドイツでは憲法の中で障害者差別禁止規定を作りました。社会福祉法では韓国など。実効性を考えると民事法であることが必要です。民事法を持っている代表例は、アメリカが90年、オーストラリア93年、イギリスが95年にできています。ドイツは96年頃に、憲法にその条項を盛り込み、その後2001年に結局民事法を作りました。
野沢 あまり役に立ってない、という批判もあるそうですが。
黒岩 (批判する人は)ドイツやスウェーデンの例を勉強してないのでしょうか。スウェーデンはノーマライゼーションの点から障害者福祉、子どもの福祉など、かつて個別にあった社会福祉に関する法律をすべて一本化して、障害者の個別法をつくらないという方針でやってきた国なのですね。普通の建築基準法の中にバリアフリーの観点も全部入っている。それにも関わらず、雇用に関しての差別禁止法をつくったんです。これは大きな意味があって、個別法をつくらないという方針では限界があったから個別法をつくったわけですから、特に雇用の分野で障害者差別を禁止する法律が必要であると認識されたわけです。これは特筆すべき例です。
佐藤 効果がないという場合、どういう意味で効果がないのかという問いを立ててみるといい。それは法律ができたことが間違いだということではなくて、それに続く活動や運動がないまま、できたことで安心しちゃうからだめだということかと思うのです。
黒岩 法律が一つできれば変わるとは思っていません。例えば障害特性への配慮義務の中身にしても、障害者が事業者に対して、要求し訴訟を起こして罰則という形ではだめで、公的にサービスが整っていて、事業者もそれを利用する、本人もそれを利用するという形で、全体のサービスが上がっていくということが大事です。
佐藤 差別って、悪意に満ちた人が意図的に差別しようとしてやっている場合ばかりではなくて、意識のすれ違い、認識の違いみたいなもので善意の場合に差別が生じていることの方が多いのでしょう。その違いを認識したうえで、お互い次のステップに踏み込めるような話し合いの場を作ることを保障するような規範を作ろう、そういう深いところでのパラダイム変換を、千葉県では1年間議論したんですね。それが十分説明しきれてなくって、障害のある人は復讐概念があるし、障害のない人も逆の被害者意識がある。パラダイム転換の部分が理解されてないのが問題なのですね。
村山 そういったパラダイム転換の話を聞くと、差別をなくす条例の重要さやその活用の仕方などがよくわかるのですが。育成会の中でも、権利を強く主張する方は一部で、多くの遠慮がちな親たちは、そういう人たちのための条例になりはしないかと、危なっかしく不安に思っていたりするわけですね。誰もが権利主体だといわれても、その意識がまだ浸透できていなくて、いつもお世話になっているみたいな意識から抜けられない。
黒岩 イギリスでは1970年代の半ばに、性差別禁止法、人種差別禁止法ができていますけど、その中ですでに、雇用均等委員会がつくられて強力な権限をもったんです。そこが差別だと判断するとその会社を徹底的に調べてつぶしてしまうくらい。それを30年やってきたけれど、差別はなくならなかった。そこでDDAは権限をもった権利委員会をつくったものの、その権限を行使するつもりはない、あくまでも対話や広報活動、情報提供による差別解消を目指しますと言ったのです。私はそのことにものすごく感銘を受けたのです。20〜30年の歴史からイギリスはそういう結論をもってやっている。パラダイム転換を図るというのは全く正しいことだと思います。
 今のお話も聞けば聞くほど、差別禁止法とか条例の運動が大事なんだなと私は思うんですよ。あなたが今受けている不快感は差別ですよということを、一人ひとりに言っていくことがすごく大事だと。私はこのプロセスがあれば、結果が裁判規範性のある法律でなくてもいいんじゃないかというぐらいに思っていて、千葉県のように条例をつくる過程で、みんなでコンセンサスをつくっていけるというのが大切だと思っています。
大塚 いろんな人とコミュニケートしながら地域でいろんなものつくる、どんな小さなことでもいいからつくっていく、そういうやり方がなかなかできなかったわけだから、今後は少なくともみんなと協働しながら地域でいろんなものつくることが重要だと考えています。その時に条例や法律はそのような活動に根拠を与えてくれるもの、後押ししてくれる有効なものだと思う。
野沢 当事者には必要なはずなんですよ。必要ないわけないんですよ。制度や金のほうに一生懸命で、「権利擁護」というと、そんなに切実感はない。しかし、日常の権利がきちんと保障されていないから、制度とかお金に求めすぎている面もあるんじゃないかな。暮らしにくさみたいなものが解消されればそんなに制度に求めなくてもいいんじゃないかなという気がする。
大塚 たぶん育成会のお母さんたちも、なかなかいい相談相手にもめぐり合えなかっただろうし、つらい思いをしていると思うんですよ。口にも出せないようなつらさをずっと背負いながらずっときていた、権利擁護はそういうものを解消する一歩なのかなと思っています。 この条例ができれば代弁者によるさまざまな代弁活動が可能になると思います。そういう意味では権利擁護は非常に重要なものと考えますが、まだまだ福祉の分野でそういう活動を熱心にやろうとすると、いき過ぎた強い権利主張と捉えられる風土が現実にはわが国には存在すると思います。
村山 被害を訴えた人が排除される。職場の教員は身内をかばう。被害者をサポートする職員や教員が徹底的に排除される、という現実もまだある。さらに刑事裁判では応援してくれたのに、国家賠償の話になったら、離れていく人もいるという話を先日聞きました。この条例の運用で"権利を支え合える文化"をつくりたいですよね。
野沢 千葉県の条例でもっとも批判が出ているのは教育分野です。現場の先生たちが不安がっているという。なぜ不安かというと、現場の先生はなんのかんのいって一番苦労している。無理難題を学校に求める親がいて、この条例ができたらそういう親にしてやられるんじゃないかみたいな、すごい不安感がある。施設も同じ問題があると思いますが、この条例ができたら、今もっとも苦労している先生や職員たちがもっとも助かるようになると思う。困った時があったら、第三者が入って話し合いの手助けをしてくれる。今までの苦労が少し緩和されるということがあるんだけど、そこが理解されないんですね。
村山 たとえば私が暮らしている市川では、お母さんたちが自分の地域で働きかけたことで、町の人々の目が温かくなったり、理解者が増えたり、温かい声を聞いたりということがあって、そういう実感で、また、次やる気になる。そういうのが普通の親として大事なことですね。ほかの障害の方との交流をどういうふうにしていくかというのは課題ですよね。条例だけに関わらずね。
佐藤 ほかの政治運動や、立法活動と違っていて、われわれはこの条例ができないからといってあきらめるわけにはいかない。そんな強みがあります。条例ができなかったら、子どもの障害がなくなるのかってそういう話じゃない。条例ができてもできなくってもずっと障害とともに生きていかなければならないわけだから、あきらめられないし、あきらめる必要もないし、やるしかないというところが、強いところですよね。

<呼びかけ人> 田上昌宏(千葉県手をつなぐ育成会会長)/竜円香子(同権利擁護委員長)/大屋滋(日本自閉症協会千葉県支部長)/土橋正彦(市川市医師会長)/植野慶也(千葉県聴覚障害者連盟会長)/野内恭雄(千葉県精神障害者家族連合会会長)/成瀬正次(障害者差別をなくすための研究会委員・全国脊髄損傷者連合会副理事長)/佐藤彰一(同・法政大大学院教授)/高梨憲司(同・視覚障害者総合支援センターちばセンター長)/野沢和弘(同・全日本手をつなぐ育成会理事)
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