千葉・ちいき発


やっぱり必要、みんなで作ろう!43

★議会を傍聴しよう

 千葉県づくり条例案は2月県議会で継続審査ということになりましたが,下記のとおり休会中審査が行われます。是非傍聴に参加して頂き皆さんの気持ちが議員の方々に届くようにしましょう。

健康福祉常任委員会
5月12日(金) 10:00
電話で申し込んでください。(議会事務局)
043−223−2515  043−223−2518

★続々開催、勉強会

 各地で条例の勉強会が続々と開催されます。ぜひ条例案の趣旨を理解しましょう。そして、この条例がいかに障害者や家族にとって大事なものなのかを話し合いましょう。

5月24日(水) 市原   午後1時半〜
5月26日(金) 県育成会 午前11時〜
5月27日(土) 千葉市  午前10時〜
5月31日(水) 千葉市  午前10時〜
6月3日(土)  市川市  午後
6月5日(月)  船橋市  午前
6月6日(火)  佐倉市 午前10時〜
※松戸市 日程を調整中。
※習志野 検討中

<シリーズ> なぜ条例が必要なのか

 6月議会での成立を目指すために、もう一度確認しておきたいと思います。
 知的障害者がレストランに入ろうとしたら「ほかのお客さまが嫌がるので……」と店員に断れました。水泳クラブに入会しようとして拒否された障害者もいます。「設備が整っていないから」という理由です。「いや、特別な設備なんか何も必要ないんです」と食い下がったところ、「お互いに嫌な思いはしたくないでしょう」と冷たく言われたというのです。
 障害のある子を普通学級に入学させようとしたら、「普通学級、普通学級というけれど、お宅の子は普通じゃないんですよ」と教育委員会の担当者に言われた人もいます。たしかに法律では、どの学校に子どもを通わせるかは教育委員会が通告することになっていますが、親は本人の意向にも十分に耳を傾けなければならないとする判例もあるのです。カゼをひいて近所の診療所に行ったところ、「バカにつける薬はない」と言われた人もいます。こんな医療関係者はごく一部の例外的な人だと思いますが、それでも言われた人の立場になってみれば、心に深く傷が残る場合が多いのではないでしょうか。市役所の福祉課で障害者扶養手当の手続きをしていたら、職員に諭された人もいます。「もう一人子どもを欲しい? また障害児を生むつもりですか」
 これらは、いずれも現実にあった話や、県民から寄せられた差別事例の中にある話です。ほとんどの障害児の親はいつも変なものを見るような目にさらされてきたと思います。電車の中でも、店の中でも、旅行先でも、学校でも、親戚の間でも。
 地域生活を推進している人たちからは、入所施設に障害のある子を入れる親が批判されますが、朝起きてから寝るまで居たたまれない思いをさせられている親は今でも多いのです。誰だって可愛い子に不自由な思いはさせたくはないはずです。いつもどこでも冷たい目で見られ、バカにされ、いやみを言われ、無視されていると、知らず知らずのうちに気持がすくんでしまい、萎縮した生き方が身に付いてくるものではないでしょうか。
 こういう差別や偏見がなくなれば、多くの親が地域でありのままに生活する選択肢を取ると思います。障害児と日常生活を共にしていると、肉体的負担もあるが、むしろ精神的負担が重く親にのしかかるものです。重さでつぶれてしまう親も相変わらず多いのです。その「負担」の正体とは、障害者に対する冷ややかな目であり、差別や偏見なのです。

 私たちは第三次千葉県障害者基本計画に基づき、障害者差別をなくす条例のために1年余に渡って研究会を開催してきました。条例という法規範を持つことで、日常的に起きている差別や排除に障害者や家族が泣き寝入りしなくてすむようにする、知らないうちに差別している側にも相手の痛みをわかってもらう、そして障害者への眼差しをやさしいものに変える……そういうことが目的です。そうすれば、負担に押しつぶされてしまう家庭を少しでも救うことができるのではないかと思います。
 現役サラリーマンや子育てに忙しい主婦も研究会に参加できるように、会議はいつも平日の夜、県庁で行ってきました。視覚障害、聴覚障害、車いすの人、精神障害、これらの障害者の家族、支援者らに加え、差別する側と目されることが多い企業の人々までメンバーになりました。観光ホテルの営業マン、製薬会社役員、不動産会社経営者。それに医療や教育の関係者も参加してくれました。毎回、県庁内各課の担当者が大勢傍聴に訪れ、午後9時や10時まで、熱心に耳を傾けてくれました。
 その成果として、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例案」ができたのです。

 条例案は今年2月の県議会に提出されましたが、残念ながら成立は見送られ、継続審議になりました。誤解や理解不足から条例案の中味を批判する人も目立ちました。条例案を作り、それを県議会に提出する手続きについて批判もありました。堂本県知事と議会との確執を指摘する新聞記事も複数ありました。忙しい中を必死になって、わが子のために条例制定に汗をかいてきた親たちは本当に無念でした。どうして、障害者や親とは関係のないところで反対されるのか、まったく意味がわかりませんでした。
 それでも、障害のある子を持つお母さんたちは必死に県会議員の先生たちに陳情に回りました。熱心に聞いてくれる人もいました。あまり相手にされなくても、冷ややかな対応をされたこともありました。それでも一生懸命にお願いに行きました。何とかわが子を見る冷ややかな目を少しでも変えることができればと思ったからです。
 しかし、それでも、サービスが削られそうだとか、制度改革に向けて少しでもサービス支給量を増やそうという際の運動に比べ、障害者本人も親も福祉の仕事をしている職員たちも、やっぱりあまり活発ではありませんでした。一部の人を除いて。支援費や自立支援法などの制度改革には、みんなあれだけのエネルギーを注いできたのに、いったいどういうわけなのでしょう。
 障害者自立支援法の施行時期と重なり、それどころではなかったせいもあるでしょう。福祉サービスの提供者にしてみれば、いつ差別だと指摘されかねない立場でもあり、胸を張って条例推進を叫ぶことができないのかもしれないのかなあとも思いました。
 しかし、言葉を発することのできない重度の障害者のために、誰かが代弁しなければならないはずです。焦りばかりが募り、継続審議が決まったときは、砂漠の真ん中で乾ききった砂を飲み込むような思いがしたものです。
 ノーマライゼーションが標榜され、施設から地域へと言われながら、それでも親たちが入所施設を選択してきたのは、地域で暮らそうとしても差別や偏見に嫌と言うほどさらされているからだと思います。誰だってわが子は可愛い。障害のない子と同じように住み慣れた地域で自由に暮らさせてやりたくないわけがないと思います。それを阻害しているのは地域福祉サービスの不足ではなく、冷たい視線や無視や排除や迫害です。たとえ地域でのサービスがなくても、隣近所や学校や職場で温かく障害児者が受け入れられ、助け合いの輪が障害者の周囲にあれば、これほどまでには入所施設信仰が多くの親の間に広まらなかったと私は思います。
 福祉サービスが足りないことと、障害者への差別があることは、一部は関連しながらも、基本的には別次元の問題だと思います。そうでなくては、あれだけ福祉の先進国で高福祉が知られているスウェーデンで障害者への虐待や差別が深刻な社会問題になり90年代末になってようやく差別禁止法が制定されたことの理由が見つかりません。

 6月議会でこの条例案をぜひとも成立させてほしいと思います。私たちは誰に頼まれてやっているわけでもなく、条例ができれば何か得するわけでもありません。ただ、踏みつけられても文句も言えない障害者のために、当たり前のことを当たり前に考えてくれるような世の中にしていきたいと思っているだけです。裁判に訴えるような覚悟を決めなくても、日常生活の中で相談に乗ってくれる人がいて、問題解決のための話し合いをしてくれるような機会がほしいのです。
 そして、この条例案はけっして障害者のためだけでなく、生きにくさを感じている多くの県民のためになり、明日の千葉県を託す子どもたちにとっても、共感する力、生きる力、情感を育てることに役立つはずです。そのための一歩なのです。

(文責・野沢)

<呼びかけ人> 田上昌宏(千葉県手をつなぐ育成会会長)/竜円香子(同権利擁護委員長)/大屋滋(日本自閉症協会千葉県支部長)/土橋正彦(市川市医師会長)/植野慶也(千葉県聴覚障害者連盟会長)/野内恭雄(千葉県精神障害者家族連合会会長)/成瀬正次(障害者差別をなくすための研究会委員・全国脊髄損傷者連合会副理事長)/佐藤彰一(同・法政大大学院教授)/高梨憲司(同・視覚障害者総合支援センターちばセンター長)/野沢和弘(同・全日本手をつなぐ育成会理事)
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