千葉・ちいき発


やっぱり必要、みんなで作ろう!17

vol.17

Q&A 障害者を雇わないと差別ですか?

※条例案の労働分野に関する規定は次の通り
@労働者の募集又は採用に当たって、応募若しくは採用を拒否し、又は条件を課し、その他不利益な取扱いをすること。
A賃金、労働時間その他の労働条件又は配置、昇進若しくは教育訓練若しくは福利厚生について、不利益な取扱いをすること。
B解雇し、又は退職を強いること。

 この規定案を読むときには次の前提を置いてください(別の場所で明文で規定されます)
@これは「障害を理由」とする不利益取り扱いを禁止するものである。
A合理的配慮は別に規定されている。
B不利益取り扱い、合理的配慮義務のいずれも、「過重な負担」となる場合は適用しない。
 以上、@からBまでを前提に、就労の条例案を読むと、県民は「できる範囲で」「障害を理由とする」就労差別をなくしましょうと規定していることになります。事業者の立場からは「できる範囲」以上のことを要求されるのではないか、能力に応じた雇用形態(障害を理由としないもの)を実施したときも、「差別だ」と主張されるのではないか、という疑問があるかもしれませんが、この点は明文で否定しています。
 こうした疑問がでる背景事情は理解できます。現実のトラブルは、障害者側が、合理的配慮が「できる」はずだと主張するのに対して事業者側が「できない」と反論し、事業者側が「能力に応じた賃金」と主張するのに対し障害者側が「障害者だから安くしているのではないか」と疑う……など、双方の主張する前提的事実が違っているケースがあると思われるからです。
 そうした不安や批判が存在することは理解できるのですが、それは、条例の条文の工夫で解消できるものではなく、話し合いの運用の中で工夫されるべきものだと思います。この条例案の規定がなければ、逆に、上述の事実認識の齟齬があるトラブルを、適切に話し合う枠組みが存在しないことになります。現状はそうです。あちこちで、雇用者と被用者が「できない、などの主張は許さない」「無理難題をいうのなら出ていってくれ」「それは差別意識だ」などと、不信感を増幅するやり取りが重ねられていることが想像できます。
 事実的前提が違っているにしても、条例の規範的な枠組みを共有することは、雇用者・被雇用者の双方で話し合いの枠組みができることを意味しており、大きなメリットがあります。「能力が違うといっていることは障害者差別だ」というのではなく、「障害を理由としているかどうか」を冷静に切り分けていけるからです。「できるけどやらない」とか「できなくてもやるべきだ」などという主張は少なくとも排斥され、できるのかできないのかを、互いに工夫してく足場が築けるはずです。

(文責・佐藤彰一)

<呼びかけ人> 田上昌宏(千葉県手をつなぐ育成会会長)/竜円香子(同権利擁護委員長)/大屋滋(日本自閉症協会千葉県支部長)/土橋正彦(市川市医師会長)/植野慶也(千葉県聴覚障害者連盟会長)/野内恭雄(千葉県精神障害者家族連合会会長)/成瀬正次(障害者差別をなくすための研究会委員・全国脊髄損傷者連合会副理事長)/佐藤彰一(同・法政大大学院教授)/高梨憲司(同・視覚障害者総合支援センターちばセンター長)/野沢和弘(同・全日本手をつなぐ育成会理事)
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