千葉・ちいき発


やっぱり必要、みんなで作ろう!14

vol.14

Q&A それでも指導の現場が混乱する、と心配の声もあります

(条例案の教育分野の条項)
@本人の教育的要求を把握した適切な指導及び必要な支援を行う教育を受ける機会を、本人又はその保護者の意に反して、与えないこと。
A 本人又はその保護者が希望しない学校への入学を強いること。
B 本人又はその保護者に過重な人的負担、物的負担又は経済的負担を課すこと。

 条例案は、統合教育に賛成も反対もしていません。@からBの規定は、親の意見を聞いてくださいというのが骨子であって、必ず普通学級へ通わさなければならないとか、統合教育を行わなければ差別であると規定したものではありません。
 一方、就学先の決定は、教育委員会に最終権限があるとされていますが、これは委員会の専断を認めているわけではありません。肢体不自由児の就学場所の決定で、特殊学級が普通学級の選択をめぐって争われた裁判がありましたが、この判例も学校側の指定権限を認めつつ、学校側の専断を否定しているのです。
 ※参考 特殊学級入級処分と障害児・両親の学級選択権――特殊学級入級処分取消等請求事件訴訟控訴審判決(平成6.5.24札幌高判)判例タイムズ854号102頁

 また、発達障害者支援法2条3項は「この法律において『発達支援』とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう」と規定し、その上で3条3項は「発達障害者の支援等の施策が講じられるに当たっては、発達障害者及び発達障害児の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう)の意思ができる限り尊重されなければならないものとする」と書かれています。
 このように、障害児童・生徒の教育支援にあたっては保護者の意思を尊重すべきことが法律上の義務となっており、条例でこれを無視することはできないのです。

 人員配置や予算が十分ない中では、関係者が少しずつ負担をしたり折り合いをつけたりしながら、障害のある児童・生徒の望む教育を提供する努力が求められる場面があります。こうした現実を配慮せずに過重な負担を課しては、せっかくの努力や熱意が水泡に帰すことにもなりかねません。Bの規定は保護者側を念頭に置いたものですが、条例案には学校側を念頭においた過重負担を課さない規定もあり、関係者の過重負担を排除する姿勢を貫いています。

(文責・佐藤彰一)

<呼びかけ人> 田上昌宏(千葉県手をつなぐ育成会会長)/竜円香子(同権利擁護委員長)/大屋滋(日本自閉症協会千葉県支部長)/土橋正彦(市川市医師会長)/植野慶也(千葉県聴覚障害者連盟会長)/野内恭雄(千葉県精神障害者家族連合会会長)/成瀬正次(障害者差別をなくすための研究会委員・全国脊髄損傷者連合会副理事長)/佐藤彰一(同・法政大大学院教授)/高梨憲司(同・視覚障害者総合支援センターちばセンター長)/野沢和弘(同・全日本手をつなぐ育成会理事)
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